京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

カラト(からと)

 「カラト」は唐櫃の字があてられ、米がらとの上略語である。「カラヒツ」が「カラウト」に、そして「カラト」へと音変化したと考えられるが、安永4年(1775)の『物類称呼』には「東国にてこめびつ、京にてからとと云、大坂及堺にてげぶつ」とあるし、同じころの『俚言集覧』には「げびつ。大坂にて米櫃と云ふ」とあることから、京ことばの「カラト」と大阪ことばの「ゲビツ」とは対立することがわかる。この相違は「~ドス」と「~ダス」との境界線と一致するものか。大阪圏に近い京田辺市で「ゲベツ」と、木津町では「ゲオツ」という。  雑俳ではわりと早く、「ぐわたぐわた 胸へこたへる米からと」元禄16年(1703)とか「美しい ふき入れて有る米唐戸(からと)」天保4年(1833)とある。最近では、「カラト」も金属製がプラスチック製になったり、用途も米櫃から衣装入れなどそれぞれに転用されたりしている