京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

イッケ(いっけ)

 「イッケ」は一家であって、(A)その家に住んでいる者の意と(B)親類や分家といった意味とに分かれそうである。方言的には(B)の意が強く西日本に広く分布している。慶長8年(1605)の『日葡辞書』によると、「イッケ、一つの家。または一族」とある。ところが延享2年(1745)に書かれた「夏祭浪花鑑」では、「たとへ一家で有うが、女房で有うが、肌の赦(ゆる)されぬ時節」とでる。ここでは、(B)の親類や分家といった意味にとれる。  さて、雑俳ではとみてみると、「そろふたり 三幅対は絵の一家」元禄15年(1702)、から「百姓の隣 大かた濃い一家」寛政8年(1796)、「勢ひよう 一家廻りも草履がけ」天保10年(1839)、「姿替へ 一っ家中泣かすおぼこ後家」明治31年(1898)となっていく。このあたり、(A)の意から(B)の意へと変化していくようすがわかる。なかなか、「イッケ」という人間関係はたいへんである。