京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

イカイ(いかい)

 「イカイ」とは、語源は厳(いか)しから転じたものといわれ、現在では大きいといった意味で用いられている。中世からみられる語で、慶安3年(1650)の『かたこと』には「但(ただし)、いかいとはいかめしひの中略か」とある。また、安永4年(1775)の『物類称呼』には「いかいものといふ時は大いなる事」となる。このあたりで厳(いか)いが大きいへと意味変化したのではないのか。用例としては「イカイ物もって、どこ行くのニャナ」などと使用するが、この語の方言範囲は広い。  雑俳でみるとこの経過が「いかいこと 一字名つくさがげんじ」元禄9年(1696)が「あたたかな いっかい尻の退(の)いた跡」宝永6年(1709)、そして「あと思ふ 大(い)かい蚊帳買ふ新世帯」明治43年(1910)、となってでてくる。「イカイ」は旧京都市内ではあまり使われなくなったが、周辺部の八瀬、大原、花背など北部で現用されている。