京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

ホカス (ほかす)

 「ホカス」とは、捨てるの意である。語源は放下(ほうか)すが転じたものといわれ、元禄11年(1698)の『書言字体節用集』に「放下、ホカス」とでてくるので、それほど古い語ではないらしい。「これ、イランシホカシトイテ」などと近畿圏では使用されている。類義語で「ホル(放る)」ともいうが、それが「机の上のモン(物)、ホットイテ」となると、そのまま放置しておいてという意味になって、関東の人にはその意味が放るのかそうではないのかという理解に苦しむという。
 雑俳では幕末のころになると、次のような句がみられる。「後へ気の抛(ほか)せぬ妻の冷た膝」弘化2年(1845)とか「芸尽し よつぽど抛(ほか)したと見える」嘉永4年(1851)などとみられる。京都府では、北部の丹後から南部の木津町まで「ホカス」は捨てるの意である。さてさて、人生はなにをホカシて、なにを取ればエエのか自分の目でみきわめる必要がある。