京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

エズクルシイ(えずくるしい)

 「エズクルシイ」は、(A)の吐気を催しそうであるの意と、(B)の気味が悪いとか毒々しいといった意味とをもつ。「エズ」は形容詞「エズイ」の語幹で、それに「クルシイ」(苦しい)がついたものである。京ことばとしては、主として(B)の意味で使用されることが多い。「暖かなったシ、パッチはいてるとエズクルシイ」とか「子どもも大きなるとエズクルシイオスな」とかいったように用いる。文献では、「猿丸太夫鹿巻毫」に「ひつたり抱きつく柳腰、ひきがえるよりゑづくろし」元文元年(1736)などとある。ところが、この語の方言範囲は狭い。それも、「エゾクルシイ」と訛(なま)った形ででてきて、京都市、滋賀県、岐阜県どまりである。  雑俳資料でもあまりでてこない。例えば、「ゑづくろしい 御馳走の噺(はなし)する通辞」文化元年(1804)ぐらいである。ただ、京都内はもちろん、周辺部の八瀬、花背、中川の地区、また北桑田郡で現用されている語でもある。