京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

ドス (どす)

 いまひとつ、京都語の代表的な敬語の助動詞に「~ドス」がある。この「~ドス」については、「~デオス」が「~ドス」に変わったというのが通説である。たしかにそうであろうが、文献での用例がなく、辞書では幕末から明治の初期にかけ出た語としか説明されてない。この丁寧な意をもつ「~ドス」について、いま一度見なおしてみよう。
 まず上方雑俳でみてみると、元禄15年(1702)の句に「機嫌(きげん)かい也 五節句をとらぬ師匠にほうどすへ」とある。この用法はここでいう「~ドス」と同じと考えられるが、どう解釈したらよいのだろうか。その後は雑俳でも見あたらなくて、やっと明治26年(1893)になって「自慢して そふどす水は此(この)土地の」の句がでてくる。そして、明治末期や大正初期に書かれた高浜虚子や長田幹彦が祗園の場を描いた小説となると、つぎつぎとこの「~ドス」がでてくることとなる。ただ、幕末から明治にかけての語といわれると疑問が残る。