京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

べべ (べべ)

 方言での「べべ」にはいろいろな意味をもつが、京都では着物のことをいう。幼児語ともいわれるが、京都人は大人の場合にもいい、「エエべべ着て、今日はどこ行くのエ」などと使用する。1月15日の成人式やお茶会などでは、若い女性の「べべ」は華やかなものとなる。その語源はいろいろといわれているが、『大言海』にいう紅(べに)を略して重ねたものであろうか。着物の意で「べべ」が通用する範囲は、近畿内である。
 さて、京都の庶民がいう雑俳では「ごふく屋は世界のべべの作本屋」宝永5年(1708)あたりからみられる。それが、「からくりて 笹の衣装(べべ)着たお饅(まん)売る」天保15年(1844)、「ほしいなあ この伯父さんに其(その)着物(べべ)を」明治16年(1883)などとなる。京都の表具屋さんでは、本紙と布地(きれじ)をとり合わせて表装することを「べべ、キセル」というが、まことに言い得(え)て妙な表現ではないか。