京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

アンジョウ(あんじょう)

 「アンジョウ」も(A)ほどよく、上手にの意と、(B)よく、十分にとの意に大別されそうである。例えば、「アンジョウ、御飯炊けたワ」とか「試験の答、アンジョウ見直したか」といったように使用する。語源は、味良しの意味で撥音の「ン」が挿入され、ウ音便化したものである。そして、「アンジョウ」という語に固定化されたのは18世紀末ごろからという。文献では、文政2年(1821)の『浪花聞書』に「あんじよ(味能)、あんじよいたすなどいふ。あんじよくする也」とあって、以降の明治19年(1886)の「京阪言語違」になると「あんじょう(京阪)、ほどよく(東京)」となる。  雑俳でみると、(B)の意で「咄(はなし)山々あんじやうきいたらうそらしい」文政5年(1857)、(A)の意で「かんち あんぜう頭巾(ずきん)着せてやり」明治25年(1892)がみられる。「アンジョウ」は近畿やその近辺でみられるが、同類語に「アンバイヨウ」がある。