からたちの花
渉成園の石垣
門をくぐるとモダンといっていい石組が目にとびこんでくる。斬新なその意匠に見とれていると、そのひともとに長く鋭いとげに守られるようにして枳殻の花が咲いている。
ミカン属だから柑橘系の芳香もある。とはいっても秋に実る小さな黄色い実は酸っぱ過ぎてとても食用とはならない。けれど中国からこの実は健胃、利尿などの薬用として渡来しています。
北原白秋が「青い青いとげだよ」と歌ったとげは、生垣として万葉の時代から利用されてきた。渉成園と呼ばれるこの庭園の周囲には、かつてからたちが生垣として巡らされていたことから、〝枳殻邸〟の別名でも呼ばれてきました。
広大な回遊式の庭園にはさまざまな建物が配されて多様な景観をつくり出しています。
辿りながらふと、憲法第九条をこの枳殻で取り囲みたいと思った。とげの鋭い1本1本を一人ひとりの意志として。