医療+暮らし

子宮脱・性器脱の様々な治療法

患者さんの状態に応じて選択を

リングペッサリー

子宮脱の治療

リングペッサリーを骨盤内に挿入した図(上)、実際のリングペッサリー

 前回書きました子宮脱と性器脱の対処法についてです。
 腟内にリングペッサリーという器具を入れて子宮の位置を骨盤内に矯正することもあります。腟内に異物を入れるので、時間が経つにつれ、リング周囲に炎症が起き、おりものや出血が増える原因にもなります。
 ですから、リングペッサリーを入れた方は定期的に婦人科を受診し、リングペッサリーと腟壁との癒着が起こらないように、内診もしくはペッサリーの入れ替えをする必要があります。また強い膀胱瘤(膀胱だけが腟壁から脱出する状態)や直腸瘤(腟後壁が腟の入り口から脱出する状態)には効果が期待できません。

縫い縮める手術法

 根本的な治療としては、手術療法があります。以前から行われていた方法は下がってくる子宮を腟から切除し、下がってくる膀胱・直腸の壁を縫い縮める方法で当院でも長らく行ってきました。この方法でリングや性器脱の症状から開放される方がほとんどですが、最大の問題は再発です。
 もともと弱くなっている靭帯を縫い縮めても、また靭帯が緩んで脱出する可能性があるからです(当院での再発率は約5%です)。また、高齢で夫婦生活がない方、子宮摘出後などで子宮癌検診をする必要のない方には腟を閉鎖してしまう腟閉鎖術を行うこともあります。

メッシュ埋没手術

子宮脱の治療

メッシュ埋没手術の解説図

 再発がより少ない手術方法として2000年フランスで考案されたのが、メッシュ埋没手術(TVM手術)です。性器脱をヘルニアと考えて、弱くなっている靭帯をメッシュで補強する、腟という孔をふさいでしまう方法で、日本でも2004年ごろから一部の病院で行われるようになってきました。当院でもこの手術方法を2007年9月から導入しました。
 この手術方法では必ずしも子宮をとる必要はないのですが、残した子宮や卵巣に癌ができた時に子宮摘出術が難しくなる可能性があり、また腟粘膜下にメッシュという異物を入れるので炎症や拒絶反応の出る可能性があります。また長期的に本当に再発が少ないのかというデータや安全性についてのデータに乏しく、当院では、患者さんの状態に応じて手術方法を選択しています。

1週間は入院全身麻酔で

 手術の為の入院期間はいずれも1週間程度で、全身麻酔が必要です(腟閉鎖術であれば局所麻酔で数日の入院でも可能です)。従来の手術方法の方が靭帯を縫い縮めますので、若干痛みは強いかもしれません。しかし、いずれも鎮痛剤の内服で良くなられる方がほとんどです。
 性器脱は、死ぬ病気ではありませんが、人に言えない悩みということでQOLを著しく悪くする病気の一つです。治療方法はいくつかあり、殆どの方で軽快・治癒が可能です。
 是非、産婦人科に御相談下さい。
京都民医連中央病院 産婦人科科長 中村光佐子
2009年9月18日 10:54 |コメント0

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