医療+暮らし

拒食症・過食症とは(3)

拒食症・過食症の治療(後半)

自分でできる生活改善

  1. 三食規則正しく食べましょう。
    肥満を防ごうとして食事を抜くと、脳が低血糖状態におちいり(脳がエネルギー切れになる)、からだに「過食せよ」という信号を送るため、激しい過食衝動がおきます。そのため結局「食べない→食べたら止まらない」の悪循環に陥ってしまうのです。
  2. 極端にやせている人は体重を標準体重に近づけましょう。
    極端なやせがある場合は脳から「過食せよ」という信号が体に送られるため、過食の衝動が起こりやすくなります。
  3. ストレス発散法を根気よく探しましょう。
    音楽を聞く、ボクシングなど、自分にあった発散のしかたを見つけられた人ほどうまく治ります。根気よく探し、試してみましょう。
  4. 完璧主義をゆるめましょう。
    完璧主義はほんらい成功する人に多い、よい性格です。けれどもついつい「100点でなければ0点と同じことだ」と考えてしまい、自分をダメな人間のように感じて落ち込んでしまうことはありませんか。でもふつうは人間みな0点でも100点でもないその中間のことが多いでしょうし、またそれでよいと思えるとかえってリラックスできるかもしれません。
  5. これ以外にも、症状に関係する心理的ストレスについて自分の場合を振り返ってみましょう。何が過食の引き金になっていますか。
  6. こうした問題のほとんどは、すぐには変えにくいものです。また、頭で分かっていても、1人ですぐに自分を変えることなど誰にもできません。小さくてもよいから今できる工夫を医師と相談しながら根気よく探し、自分なりの対処方法を見つけていきましょう。
拒食症
自分にあったストレス発散の仕方を試すのも自分でできる生活改善の1つです

過食・拒食に効く薬は?

 「のむだけで拒食・過食を完治してしまう魔法の薬」は残念ながらありません。しかし、抗うつ剤などがこの病気に一定の効果をもつ場合があります。
 気持ちの浮き沈みが激しい時は、気分に対してイライラ止めや抗うつ剤が利用できます。
 下剤はできれば用いず、用いたとしても主治医が許可する種類や量のみにしましょう。下剤がくせになると治るのにさらに時間を要します。
 吐きぐせのついていない人は、吐く習慣をつけないようにしましょう。すでに吐きぐせのついてしまっている人は、過食をやめようとするよりまず吐く回数を週1回ずつでもよいから減らすようやってみましょう。難しいことなので一度で成功する人などいません。自分を責めず、なんどでもやってみましょう。吐くことを減らすと過食が減らしやすくなります。

体重のことばかり言われる

 「思い切って拒食症の相談のため精神科に行ったが、医者は体重のことしか言わないのでいやになり2、3回でやめてしまった」「もっと気持ちを聞いてほしかったのに」ということはありませんか。
 現在の日本で健康保険を使って治療を受けようとすると、どうしても精神科の診療時間は5分から10分に限られてしまいます。またとくに拒食症の場合、命にかかわる体重低下(30キロ代前半など)に近づいていると、医者は命を第一に考えるあまり、どうしても体重を増やすように言ってしまうのかもしれません。
 それだけではありません。体重が極端に低くなると心身が一種の飢餓状態に陥るために、痩せすぎていないふだんの自分とは、違う考え方に陥ってしまったり、行動をとってしまうことがあるのです。万引きをしてしまったり、イライラして家族にあたってしまうことも珍しくありません。そのためふだんの自分に戻ったあと振り返ると、自分でも「あの時はなぜあんなふうだったのかな」と不思議に思う人が多いのです。
 そういう心身の状態のときに話し合いに時間を費やして、結局命を救えない場合があるのを医者は知っています。そのため心身ともに、早くふだんの自分を取り戻してほしいと考えます。そのためにどうしても避けて通れないのが、元気なころの、ふだんの自分の体重に近づくことなのです。

みずから積極的に

 拒食症・過食症は、みずから積極的に治そうとする気持ちを持ち続けるかぎり、治る可能性が十分にあります。焦らずあなどらず、根気よく取り組みましょう。
京都民医連中央病院・太子道診療所精神神経科 北村 婦美
2009年7月 9日 10:30 |コメント0

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