医療+暮らし

病気には男女差―女性の心臓病(2)

女性の虚血性心疾患には特徴があります
 女性の心臓病の特徴をもう1つあげておきます。 虚血性心疾患で冠状動脈の造影検査をすると、男性の狭心症では冠状動脈が動脈硬化で狭くなっていることが多いのに対し、女性では血管の狭いところが見つからないことが少なくありません。これは微小血管障害と呼ばれ、血管造影で見えない細い血管の障害が起きているためです。前回お話した虚血性心疾患の男女の違いにはこのような動脈硬化の起こり方が異なっていることも関係していると考えられています。目に見える異常がなくても冠状動脈が傷んでいることもあるということです。冠状動脈の写真AとBを比べてみてください。

予防が大切です

女性の心臓病
普通の狭心症でみられる左の冠状動脈の写真です。動脈硬化のため矢印の部分が狭くなっています
女性の心臓病狭心症がない人の左の冠状動脈の写真です。女性の場合目に見える大きさの冠状動脈には狭さくがなくても狭心症の発作を起こすことがあります
 前回バーブラ・ストライサンドさんのことに触れましたが、彼女は次のように述べています。「女性は女性特有の心臓病についてもっと知るべきです。そして、医学界も変わるべきです。乳がんと同じように、女性が立ち上がらなければこの問題は解決しないのです」。
 では日常生活の中で女性はどのように心臓病と向き合えばよいのでしょうか。突然発症することがある病気ということを念頭において予防に努めることが大切です。
 何といっても生活習慣の改善が第一です。女性では若いうちはコレステロールが男性の半分程度ですが、50歳を過ぎた頃から急激に増えてしまうことがよくあります。生活習慣と言えば食事と運動がポイントですので、以下を参考にセルフチェックしてみてください。なお高血圧、糖尿病などの病気がある場合には、必ずかかりつけの先生に相談してください。
  1. 魚の多い食事、フルーツ、野菜、マメ類をよくとり、塩分や動物性脂肪を控えるなどバランスのよい食事に気を付けてください。メタボリック症候群が話題になることからもわかるように適切な体重を維持することは大変重要です。
  2. 読者が喫煙されている場合には、禁煙はあなたが今できる一番有効な予防方法であると強調しておきます。
  3. 身体活動を高めることが大切です。30分の歩行を週数回(できれば毎日)取り入れてください。適当な量のアルコールは心臓病の危険を下げますが、過量になると肥満、中性脂肪の増加、高血圧、心不全の危険を高めます。具体的には、日本酒、焼酎、ウイスキー、ビール、を各々ではなくあわせて1日2合以下が目安です。
  4. ストレスは女性の心臓病及び心臓発作の危険を高めます。対人関係、仕事などでのストレスが高いような場合には周りの助けを求めてください。職場の精神衛生は大きな問題となっていますので、1人で抱え込まないことが大切です。産業衛生センターなどの相談窓口もありますので活用されることを勧めます。

かかりつけ医と相談して下さい

 女性の心臓病の危険を下げるために閉経後のホルモン療法が一時考えられたことがありますが、その後の研究で否定されました。血圧、コレステロール(HDL、LDL)中性脂肪、および血糖の値については健康診断を受けてご自分の数値を知っておくことが必要です。また、医学情報は日々変わっていきますので危険因子がある方はかかりつけ医を決めて相談され、アドバイスを受けることをお勧めします。
京都民医連中央病院院長 内科循環器 吉中丈志
2009年7月 2日 13:19 |コメント0
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