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病気には男女差―女性の心臓病(1)

女性の虚血性心疾患には特徴があります
 2008年4月に歌手で女優のバーブラ・ストライサンドさんが女性の心臓血管疾病研究のため500万ドル(約5億円)をロサンゼルスの心臓血管疾病研究所に寄付したことが報じられました。寄付の理由を「女性のほうが心臓病になりやすいのに、何10年も前から女性は男性を対象とした研究結果に基づいて治療を受けてきました。これは、ばかげたことです。そろそろきちんと女性を対象とした研究を始めるべきです。女性がもっと自分の健康について知るために、医学界はその結果を女性に報告すべきです」とコメントしています。
 最近では男女という性の違いによって病気が異なることが広く知られるようになりました。循環器関係の学会でも話題として取り上げられ、性差医療・医学研究会という学会もあります。そこで今回は女性の心臓病を取り上げてみたいと思います。
 心臓病でも男性と女性では発症の年齢や症状に違いがあります。厚生労働省の調査では65歳の人が将来死亡する原因をみると、男性ではがんが1位ですが女性では心臓病が1位です。大半は狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患が原因ですから、女性の健康にとって非常に重要な病気です。グラフをご覧ください。アメリカのデータですが、心血管の病気の死亡率が男性では下がっているのに、女性では減少していないことが分かります。バーバラ・ストライサンドさんはこのような状況に警告を発しているのです。

男性よりも高齢になって起きる

 女性はエストロゲン(女性ホルモン)に大きな影響を受けています。閉経後にはこのエストロゲンが減少しますが、その頃から虚血性心疾患を発症しやすくなると考えられています。ある報告では心筋梗塞を起こした女性の9割以上が閉経後だったとされています。女性の虚血性心疾患は男性よりも5から10歳遅れて起きているのです。

症状がわかりにくい

 胸痛などの典型的な症状を伴わないことが多いことも特徴です。男性は「胸が痛い」と訴えることが多いのに対し、女性では「背中が痛い」「胃が痛い」「あごや歯が痛い」「吐き気がする」など、一見心臓発作でないような症状を訴えることが多いのです。中には無症状の場合もあります。このため早期発見が遅れて急死につながったり、受診が遅れたり診断に時間がかかる傾向にあります。

予後が男性よりも悪い

 女性の心筋梗塞は男に比べると重症になることが多く、死亡率が高いということが最近の研究でわかってきました。原因は、発症年齢が高いことと動脈硬化を進めやすくする要因(危険因子と呼ばれ、高血圧、糖尿病、高コレステロール、肥満、喫煙、虚血性心疾患の家族歴が主なものです)が多いことだと思われます。治療の成功率には差がありません。逆に50歳未満の女性では虚血性心疾患になることは稀です。しかし、かかった場合には動脈硬化とは別に原因となる病気があることが多く、重くなりやすいので注意が要ります。

メディカルチェックが大切です

 症状だけでは虚血性心疾患が分からないことがあり、特に女性でその傾向が強いことを述べました。ですから中高年になったら危険因子がある人、特に複数以上持っている場合には症状がなくてもメディカルチェックを受けることが大切です。特に運動をするような場合には気をつけましょう。
京都民医連中央病院院長 内科循環器 吉中丈志
女性の心臓病
症状があるのは心臓病を持つ女性の一部分です。危険因子を持っている場合には積極的に検診を受けることが大切になります。

女性の心臓病
アメリカの男女別心血管病死亡率(人口10万人当たり)を1971年から2001年までを折れ線グラフで示してあります。Males:男性 Females:女性です。
2009年7月 1日 12:31 |コメント0
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