医療+暮らし

インフルエンザ(2)

安静して休養、睡眠十分にとる

 診断は前回お話した特徴的な症状からある程度は推測されますが、インフルエンザのはやる時期は、ほかのかぜもよくはやりますから、周囲の状況など確実に言い切れない場合などは迅速診断キットを用いて診断の助けにしています。鼻の奥の粘膜をこすったものを診断キットに流すだけで15分くらいで結果が出ます。経験的には発症後あまり早くに検査をしても検出されないことが多いようです。
 治療に関してです。基本的なことですがインフルエンザもウィルス感染症ですから自然治癒する疾患です。したがって前述の合併症などに注意しながら安静にして、休養をとること、特に睡眠を十分にとること。そして水分を十分に補給すること、お茶、ジュース、スープなど飲みたいもので結構です。

やはり予防接種が基本
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幼児(1~4歳)の超過死亡とワクチン生産量
毎年の1~3月の総死亡数から、12月の総死亡数の3年間の平均を引いた数値を超過死亡率とした。ワクチン生産量は、0.5mlを1回量として計算した(日本小児感染症学会編『小児感染マニュアル2007』から)

タミフルと異常行動

 ところで抗インフルエンザウィルス薬と呼ばれる製剤、タミフルが2001年に認可され、2002年からは1歳以上の小児でも使用できるようになりました。発症後48時間以内に内服を開始すると有効とされていますが、経験的にも特にA型の場合には高熱などの症状の軽減に抜群に効くという実感です。
 ただタミフルに関しては異常行動との関連が指摘されています。議論の発端となったのは2005年11月に開催された第36回小児感染症学会総会において、タミフル服用後の異常行動に関する報告です。10歳代の子どもが転落事故・交通事故で命を失ったという報告です。その因果関係については、これ以後国民の間で大きな話題を呼んだことは皆さんご存知のとおりです。厚生労働省は緊急に調査研究班を立ち上げて調査を開始しています。その発表によれば、全国12都県の小児科医に対して行った調査で、医師2,846件、患者・家族2,545件の回答から、タミフルと異常言動との関連性は、使用しなかった群の発現頻度は10.6%、使用した群の発現頻度は11.9%で、有意差を認めなかったとしています。ただしこの調査の対象となったのは10歳以下が大部分でした。なお主題とはずれますが、この調査で肺炎の合併率はタミフル使用群で1/4に、クループの合併は1/3に減少しています。

未成年の使用控える

 これらの検討も踏まえて、現時点で厚労省は製薬会社に以下のような指示を出しています。「10歳以上の未成年の患者においては、因果関係は不明であるものの、本剤の服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されている。このため、この年代の患者には、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること。また小児・未成年者については、万が一の事故を防止するための予防的な対応として、本剤による治療が開始された後は、異常行動の発現のおそれがあること、自宅において療養を行う場合、少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮することについて患者・家族に対し説明を行うこと…」
 結局のところ結論はまだ出ていません。この流れを受けて臨床の現場ではタミフルは一切使わないという医師もいれば、10歳代以外は遠慮なく使うという方もいます。結論出すに足るだけの大規模調査を強く求めたいですが、今の時点での私の意見を求められれば、対応すべきはインフルエンザではなくインフルエンザにかかった人自身ということになります。使わずに待つ危険と使った場合の危険をしっかりと考え、納得して治療を進めるということに尽きると思います。
京都民医連中央病院小児科 尾崎 望
2009年1月30日 16:33 |コメント0

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