日本共産党の池内さおり前衆院議員と同党の小原明大(おはらあきひろ)・長岡京市議が、「性の多様性、性暴力、個人の尊厳について考える」をテーマに行った対談(11月9日、民青同盟京都府委員会主催)の要旨を紹介します。

■小原/みんな“色”を持っている 池内/“違い”を認め合ってこそ

 小原 17年12月定例会で、ゲイ(男性同性愛者)だとカミングアウト(公表)しました。その後、新聞で取り上げられたり、こういった学習会などで発言の場を与えていただき、すごく注目されるんです。自分だけカラフルな色(LGBTを象徴するレインボーカラー)がついていて、みなさんは無色透明という感じ。けれど、本当はそうではないんじゃないかな。

 池内 そうですね。私は、女性の体で生まれ、女性を自認する「シスジェンダー」(身体的性別と性自認が一致)です。圧倒的多数と思い込んでいる側の人たちこそ自分を知らないのでは…。

 小原 どういう人が好きか、自分の性をどう認識しているかは、みんな持っていることで、SOGI(=Sexual Orientation and Gender Identity。性的指向、性自認)の観点でみれば、みんな何らかの色を持っていると言えます。

国連も変えた同性愛の評価

 池内 ほんと、その通り。SOGIというものさしなら、一人ひとりが当事者になれると思います。性的指向って多様です。対等な個人として向き合って成立した感情は、祝福すべきだと思う。

 小原 そうですね。

 池内 この点で国連は、同性愛を精神疾患だとしていた評価を変えています。同性愛がいかなる意味でも治療の対象にはならないと1992年に宣言した。この認識は、日本の厚生労働省も踏襲しています。日本もこの見地に立って国内法を整備しないといけないし、人々の認識や生活スタイルも変わっていくべきでしょう。

 小原 同性愛者に限らず、恋愛感情がない人もいる。多様性を考えると、何がスタンダードかを決めてしまってはいけませんね。

 池内 ええ。私が性的マイノリティーの問題に接近したのは、ヘイトスピーチの現場で聞くようになったホモフォビア(同性愛嫌悪)の考えに対し、差別や偏見による分断を許せないという思いと、ジェンダーの問題との2つの角度からでした。

 小原 なるほど。

 池内 ジェンダーの視点では、「女だから」といって行動が制限され、生き方を制約される場面に出くわして、毎日のように、嫌だな、辛いなと思うんです。おっはー(小原氏)自身は、男らしさ・女らしさについて、どう感じていますか?

 小原 男らしくないということで、いじめられて、「男らしくないのはあかんのや」と合わせようとした経験があります。けれど、ジェンダーを学ぶ大学のゼミで、男らしさ・女らしさっていう社会的な圧力、男らしさっていうものに縛られていると気づき、ずいぶん楽になりました。

 池内 ありのままに生きていきたいですよね。

 小原 ジェンダーの縛りに、男性も女性ももっと目を向け、お互い自由になっていけば、いわゆるLGBTの方の困難もなくなっていくんじゃないかと思います。しかし、そこに逆流を持ち込んだのが杉田水脈さん(自民党衆院議員)でしょうか。

 池内 今の差別や抑圧が生まれた社会のゆがみや構造を問う役割を果たすべき立場の政治家が、「LGBTは〝生産性〟がない」などと、自らが分断の根源となるような発言をしました。今回の攻撃はLGBTだけに向けられたものではなく、すべての人が当事者です。あらゆる人が怒ってしかるべきだし、実際怒ってますよね。

 小原 様々な立場の方の怒りが表明されました。京都でも自民党府連前の抗議に参加しましたが、スピーチが多様で、「負けてへんぞっ」と思えて、市民社会の側の認識が進んできたと思いました。

 池内 一方で、絶対看過できないのは、辞任も辞職もせず、今もあの人が現職だということ。自民党という政党が擁護していることです。

 小原 そうですね。

■小原/「普通」という圧力で統治 池内/「個」を消去、杉田発言と通底

 池内 これには自民党としての「筋が通っている」ように思います。自民党の改憲草案は、日本国憲法(第13条)「個人の尊重」の「個」をこっそり消し去っています。ときの政権・議員の考えによっては、「個」=あなたを尊重することを制限するってことですよ。今回はLGBTといわれる人たちに牙を向けているけど、彼らの改憲草案とは「整合性はとれている」と思います。

 小原 はい。杉田さんは「生産性がない」だけでなく、同性愛は「性的嗜好」とひどい主張をし、「常識とか普通であることを見失っていく社会は秩序がなくなり崩壊する」と言っています。「普通」という圧力で社会を統治してきた自民党政治の、これが本音なのかな。

 池内 私たち自身の認識が追いつこうが追いつこまいが、社会は多様で、「普通」という概念とは違った家族の形を営んでいる人もいる。自分と違う価値観の人たちのことをちゃんと認めて、お互いに分かり合うその先で、初めて「個人の尊厳」が本当の意味で理解されるでしょう。「LGBTってどういうこと?」と説明できるように、本の1冊や2冊は手にとってお互いに歩み寄ろうと呼びかけたいです。

性暴力被害根絶へ刑法改正急務

 小原 うれしいですね。

 池内 それから、ジェンダーの問題について、国会での取り組みを紹介します。

 小原 お願いします。

 池内 ジェンダーバイアス(偏見)とものすごく関わりのある性暴力の問題です。加害行為がきちんと断罪されず、被害者バッシングが必ず出てきます。フリージャーナリストの伊藤詩織さんが、勇気を振り絞り、自らの尊厳をかけて暴行被害を訴えました。準強姦容疑で逮捕状まで取っていたのに加害者は不問に付されました。強姦罪の規定のある刑法177条の改定にあたり、性暴力被害をなくすための法改正、取り組み強化を求めて国会質疑に立ちました(17年6月)。改定は110年ぶりで、世界的に日本は遅れています。スウェーデンでは、明確な同意がない性的接触は、暴力や脅しの有無に関わらず犯罪になります。被害者(男性も含む)にとって法律が正義になるべきで、ジェンダーの中立化と平等・対等な法改正こそ必要です。

(「週刊京都民報」11月22日付より)