戦前、朝鮮半島から京都に移り、祖国を思い朝鮮半島の美術品を集め続けた鄭詔文氏(1918~89)が高麗美術館(京都市北区)を設立して30年になることを記念し、同館で特別展「鄭詔文と高麗美術館」が開催中です。12月11日まで。

■「李朝白磁」に魅了され

 6歳で両親とともに朝鮮半島を後にした鄭氏。37歳のときに骨董店で李朝白磁に出合い魅了されます。その後、在日朝鮮人作家・金達寿と出会い、兄・貴文氏とともに日本にある朝鮮半島ゆかりの遺跡をめぐり始めます。

 1969年、兄と朝鮮文化社を設立し、季刊雑誌「日本のなかの朝鮮文化」を創刊。上田正昭・京都大学教授(当時)と作家の司馬遼太郎が顧問として支え、歴史学者・林屋辰三郎、随筆家・岡部伊都子らも協力しました。72年からは、上田正昭、金達寿を講師に「日本のなかの朝鮮文化遺跡めぐり」をスタート。

 それらの活動でつながった人々に支えられ、88年、高麗美術館が開館。初代館長に林屋辰三郎が就任しました。

 朝鮮半島分断の悲劇を前に、「統一するまで故郷に帰らない」と語り、生きて故郷の土を踏むことのなかった鄭氏。初めて朝鮮半島を統一し、文化的に栄えた高麗時代に未来の理想を見て「高麗美術館」と名付け、南北統一を切望しました。

 展示では、朝鮮美術収集のきっかけとなった李朝白磁をはじめ、季刊雑誌「日本のなかの朝鮮文化」のバックナンバーなどを展示。「日本のなかの朝鮮文化遺跡めぐり」などの貴重な映像も上映しています。

 1日には、日本共産党の穀田恵二衆院議員が、同展の内覧会に参加し、あいさつ。林屋、上田、岡部各氏らとの交流について語りました。

 午前10時から午後5時。水曜休館。一般500円、大高生400円、中学生以下無料。同館☎075・491・1192。
 関連企画として10月27日、「日本のなかの朝鮮文化遺跡めぐり」、11月3日、研究講座あり。詳細同館HP http://www.koryomuseum.or.jp 参照。

(写真上=高麗美術館、写真下=創設者・鄭詔文氏

(「週刊京都民報」9月16日付より)