江戸期から昭和初期にかけての丹波と地元の名望家・岩崎家の関わりをたどる収蔵品展「岩崎家と丹波」が7月16日まで、南丹市の市立文化博物館で開かれています。新たに掘り起こされた資料を中心に、銀行経営や地域貢献、初期社会主義者との交流など岩崎家の足跡を示す資料が展示されます。

■幸徳秋水、堺利彦らと交流/寄贈の書簡、蔵書約100店を展示

 同館は2013年に、岩崎家から書簡や蔵書など数千点の資料を寄贈され、整理を進めてきました。その中から100点余が今回、展示されます。

 岩崎家は、亀山藩から苗字帯刀を許され、村役人を務めるなど有力な農家でした。明治期に須知銀行設立の中心となり、大正期には岩崎革也が頭取に就任しました。

 革也は須知町長や府会議員も務め、道路改修や須知小学校改築など地域貢献に尽力。また、幸徳秋水や堺利彦ら初期社会主義者に共感し、活動を財政的に支援しました。革也の息子・平造も須知町長を務めました。

 展示では、新たに掘り起こされた35年分の銀行の営業報告など経営状態や株主が明らかになる資料が並びます。同館の犬持雅哉学芸員は「地方銀行の研究にも有益な貴重な資料です」と評します。

 須知銀行は、丹波や京都市などに11の支店を開設。亀岡支店の開業広告は、革也の日記と照合することで文面を革也自身が考えたことも判明しました。

 また、革也は町長として道路改修や須知小学校改築を実施し、府議として貯水池の築造に尽力しました。平造も鉄道誘致に奮闘。犬持さんは、「革也らが懸命に地域貢献に取り組んだ様子が展示資料からうかがい知ることができる」と話します。

 初期社会主義者の堺利彦や幸徳秋水らとの関係では、両氏からの書簡を始め、処刑された幸徳を悼んだ蔵書への革也の書き込みなどを通じ、彼らへの共感が読み取れます。また、堺が揮ごうした扁額(へんがく)も初公開されます。

■「岩崎革也研究会」が展示協力

 堺らとの交流については、この間、退職教職員でつくる「京都丹波・岩崎革也研究会」が書簡の整理・分析を実施してきました。今回の収蔵品展でも、展示協力として同館と共同で書簡の読み込みなどを行ってきました。

 同会の芦田丈司さんは、「共同で地域の歴史を明らかにしていく取り組みができたことに意義がある」と強調します。

 収蔵品展では、同会の取り組みの成果を発表する講演会が16日、7月7日、それぞれ午後1時半から行われます。資料保存や革也の生涯・活動などについて4氏が報告します。

 同館の犬持さんは、「細かい資料を通じ、地域の歴史がより豊かになった。多くの方に足を運んでもらえれば」と話しています。

 開館午前9時~午後5時(入館午後4時半)。月曜休館(最終日開館)。大人300円、学生(高校生以上)200円、小人100円。展示解説(10、30日、午後1時半)。☎0771・68・0081(同館)。

(写真上=革也〈左〉と長男の平造〈1912年撮影〉〔南丹市立文化博物館提供〕、写真下=岩崎革也研究会のメンバーと学芸員の犬持さん〈後列右端〉)

(「週刊京都民報」6月10日付より)