京丹後市の米軍レーダー基地をめぐり、防衛省が住民や自治体に対して約束していた事項が守られない事態が相次いでいます。同基地では3月中旬から2期工事が始まっていますが、同省が「する」と言明していた住民や市への事前連絡は行われませんでした。また、同基地所属の米軍属らによる福知山市の陸自・射撃場での射撃訓練では、参加者はバスによる集団移動とされているにも関わらず、一部が自家用車で来ていたことが分かりました。

■「安全・安心」どこへ、住民憤り「最低限のルールなぜ守れない」

 2期工事は、米軍人の生活関連施設などを建設するもので、工期は2年間。防衛省・近畿中部防衛局は、安全対策の徹底とともに、着工時期を含めたスケジュールについて昨年11月、住民と米軍らの協議の場で、「米側と施工業者の調整が整い次第、関係機関および地元住民に対して説明」するとしていました。

 同市によると、着工時期について3月30日、同防衛局から口頭で市、府、地元区へ、「4月10日ごろに着手する」と伝えられたといいます。この連絡に対し、「明確に知りたい」と要望し、回答が得られないまま4月17日になって、同局から「4月10日から掘削を本格化させた」と連絡を受けたとしています。

 しかし、着工時期について、基地を毎日訪れている「米軍基地建設を憂う宇川有志の会」の永井友昭事務局長は、「3月中旬には積み上がった土砂を搬出するダンプが出入りしていた」と証言します。

 同局広報課は取材に対し、「本格的な掘削は4月10日で、それ以前は整地などの準備だ」とし、10日より前に作業が始まっていたことを認めました。

 地元区の役員は、3月30日以降、防衛局から「特に連絡は来ていない」としています。また、1期工事では市に提出していた工事予定表も、2期工事では出されておらず、市が同局に出すよう要望しています。

 同「憂う会」の三野みつる代表は、「基地設置の前提とされた『住民の安全・安心の確保』のための最低限の約束すら守らない。基地がある限り、安全・安心が脅かされることは明らかだ」と憤ります。
 同会は19日に市長に対し、問題への対応を求める緊急要請を行いました。

■ライフルを肩にバスへ乗車

 射撃訓練をめぐっては、4月17日から19日に実施された5回目の訓練で、18日に現地で監視していた日本共産党の山内健・中丹地区委員長が、射撃場に着いた車両の中に米軍関係者の私有車両を示すYナンバー車があることを目撃しました。

 訓練実施をめぐり防衛省は地元住民や市からの交通事故への不安に応えるため、「司令官等が乗車する一部の車両を除き、大型バスにより移動」を約束していました。同市も「原則はバス移動と認識している」(秘書広報課)としています。

 また、17日に、同米軍基地で米軍属がライフルを肩にかつぐなどしてバス(民間の観光バス)に持ち込んだまま、訓練に向かう姿を永井事務局長が目撃しています。訓練で使用する弾薬は「火」と書かれたステッカーを張った車両で運ぶことになっており、ライフルから弾倉は外されていると見られます。

 福知山平和委員会の水谷徳夫代表は、「私有車で来るのは集団移動の原則に反しており、看過できない。銃器の運搬でも、弾薬が装てんされていないことの確認は誰がしたのか、これで安全管理が万全といえるのか。訓練参加者もラフな格好で、射撃場内でライフルを肩にかけたまま喫煙するなど規律がゆるんでいると感じる。引き続き訓練中止を求めていきたい」と話しています。

(写真上=事前連絡のないまま着工され、工事が進む米軍レーダー基地〈4月20日〉、写真下=福知山市の陸自・射撃場内に止まるYナンバー車〈4月18日〉)

(「週刊京都民報」5月6日付より)