600万人とも言われるナチスドイツによるユダヤ人大虐殺=ホロコースト関係者らの証言だけで構成するドキュメンタリー映画『SHOAH ショア』が27日、立命館大学朱雀キャンパス(京都市中京区)で上映されます。主催者は「安倍内閣が他民族差別をあおる極右団体に支えられ、改憲・戦争への道を突き進もうとしているとき、民族差別の果ての地獄を体験した人々の証言を受けとめることは、改憲発議を許さない決意を固める好機となる」と参加を呼びかけています。

■改憲許さぬ決意込め企画

 「ショア」は、被害者・ユダヤ人の言語で絶滅の意。監督は、フランスのジャーナリスト、クロード・ランズマン。11年間、14カ国で350時間の撮影を行い、1985年、完成させました。
 作品は4部からなり、全編9時間27分。反ユダヤ主義を国是とするナチス政権が、ドイツの国内・占領地のユダヤ人を強制収容所に送って餓死させたことや、同所での反乱、ガス室を備えた絶滅収容所を建設した経緯、輸送・殺害方法などが関係者によって詳細かつ多角的に語られます。

■アウシュビッツ解放の日に

 絶滅収容所で死体処理の下働きをさせられ、妻や子どもの亡骸(なきがら)に遭遇したユダヤ人男性、罪の意識に耐え切れずウオッカを飲んで輸送した機関士、収容所近くで好奇と苦悩のまなざしで事態を見たポーランド人農夫、「最初は知らなかった」という元ナチス親衛隊員、輸送は民間旅行会社に団体旅行の形で行わせたなどとする研究者の証言を紹介し、他民族・少数者差別を根にした蛮行が、無知や傍観に支えられて拡大・暴走し、一般市民や被害者までも加害者側に組み込んでいく〝悪魔のメカニズム〟をあぶりだします。

 上映会は立命館大学コリア研究センターと映画《SHOAHショアー》を観る会の共催。「WEBマガジン・福祉広場」編集長の井上吉郎氏が約3年かけて準備してきました。1945年にアウシュビッツ強制収容所が解放された1月27日を、2005年の国連総会で「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」と定めたことから、この日に上映することにしました。

■「福祉広場」井上吉郎氏/排除、無知、傍観が戦争招く

 井上氏は「日本も政府に異を唱える人々を弾圧し、他民族蔑視の思想のもとに侵略戦争の道を進んだ。その反省で日本国憲法が作られたにもかかわらず、安倍政権の下、ヘイトスピーチなど『他者排除』が強まり、改憲発議まで行われようとしている。他者排除、無知、傍観の恐ろしさを知り、改憲発議を許さないために過去を学んでほしい」と語ります。

 1部午前10時(開場9時半)、2部午後0時55分、3部3時40分、4部6時20分。資料代一般3500円(前売り3000円)、大学生以下2000円(前売りも)。問い合わせ☎075・202・2211(シネマソラ)。

(写真=アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所跡 ©Les Films Aleph)

(「週刊京都民報」1月14日付より)