「ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟」原告で2016年に72歳で亡くなった被爆者が描いた絵を多くの人に見てもらいたいと、一周忌を機に息子さんが作品展を企画。1月10日から、京都市下京区のしんらん交流館で開きます。

■裁判を継承し来年1月判決

 展覧会のタイトルは「原爆の惨禍、生きてきた証、そして平和の願いを絵に託す」。故・原野宣弘さん=宇治市=は、長崎の原爆で亡くなった父を探しに爆心地を歩いた母に背負われ、生後10カ月で被爆。40代の時に脳出血で倒れ、重度の言語障害と右側体幹機能障害が残りました。その後も脳梗塞や心筋梗塞で入退院を繰り返しました。

 08年、「放射性起因性のある心筋梗塞」が原爆症に認定されるようになったことを知り、申請しましたが、却下。11年に提訴しました。裁判は、長男の原野朋弘さん(42)=宇治市=が引き継ぎ、来年1月16日には大阪高裁で判決が出される予定です。

 原野さんが絵を描くようになったのは50歳から。小学生の頃から絵が得意で、リハビリを兼ね「被爆者として生きた証を残したい」と、20数年で50作品を制作。平和記念像、家族をハト、母親をマリア様として描いた作品など、生かされていることへの感謝、平和への祈りなどがテーマです。

 朋弘さんは、「負けず嫌いの父で、大変な闘病生活の中でも裁判を闘う姿に諦めない強い意志を学んだ」と言います。「悔しい思いもあったと思うのに、父の絵は祈りや温かい光があふれています。親孝行はあまりできなかったが、きっと父は多くの人に作品を見てもらいたいと願っていると思う」と話しています。展覧会後、希望者には絵を進呈したいとしています。

 1月10日~22日、9時~19時(土日祝は17時まで)、無料。問い合わせ☎075・811・3203(京都原水爆被災者懇談会)。

(「週刊京都民報」12月10日付より)