「生涯派遣」「雇い止め」など、労働形態にかかわる法改悪の影響が懸念される2018年を前に、テレビ・ラジオ放送局KBS京都(株式会社京都放送、京都市上京区)で、派遣労働者の女性2人が直接雇用されることになりました。職場復帰と雇用継続がかない、「引き続き働ける。うれしい」と意欲を高めています。

■“支援に感謝”“組合の存在心強い”

 2人は、元派遣スタッフの佐藤典子さんと来年3月末で3年の契約期限を迎えるAさん(42)。民放労連京都放送労組(小泉達郎委員長)の組合員です。
 それぞれ実現の過程は異なりますが、「非正規労働者の生活と労働条件を守り、向上をめざす」観点で、労働組合が粘り強く運動した成果のたまものです。
 佐藤さんは、派遣社員として報道のテロップ業務に18年間従事していました。労組に入って15年秋、無期直接雇用を要求。直用化には2年を要しました。

 佐藤さんの働き方は、日常業務の指示や命令を派遣元ではなく、派遣先(KBS京都)で受ける「偽装請負」が疑われるとして、同労組が京都労働局に是正を求めましたが、昨年の春は「違法性はない」と判断。再調査を働きかけ、秋に違法認定を勝ちとりました。同社は派遣元との契約を解除。
 これを受けて同労組が、「労働契約申し込みみなし制度」の適用なども視野に入れて、直接無期雇用にするようKBS京都に求めました。「違法ではなく、堂々と働ける」と喜んだ佐藤さんの期待を裏切り、同社は佐藤さんの職を奪いました。

 労組は、佐藤さんの雇用確保を求めて署名運動、街頭宣伝を展開。民放労連の定期大会で会社社長あてに、佐藤さんの「無期直用化を求める決議」を2大会にわたり採択するなど、世論と支援の輪を広げました。署名に寄せられた約4700人の賛意と、要求に応じない経営陣を株主総会(6月)で退陣させ、事態が好転。年末闘争で念願がかない、佐藤さんは来年1月から職場に戻ることになりました。
 1年前の支援集会で、「これまでと同じ待遇でKBS京都で働き続けたい」と話していた佐藤さんは、「(願いがかなうのは)無理かなと不安もあったので、ほっとしました。みなさんの支援に感謝し、頑張りたい」と気持ちを新たにしています。

 Aさんは、18年4月から直接雇用(常勤アルバイト・3年半の有期)が決まりました。
 同労組が16年の春闘で、派遣労働者の処遇改善を繰り返し要求するなか、会社側が「派遣社員の組合員が会社に直接雇用の要求を出すなら、それに答える」と回答し、「直用化制度」が実現しました。
 この年末闘争でAさんは、契約が切れた後の直接雇用を希望し、同制度の適用第1号となりました。
 派遣元と3カ月ごとの契約更新を重ねてきたAさんは、「直接雇用はありがたい。慣れた職場で雇用の見通しができたことはうれしい」と喜びます。
 以前、他県の放送局でも派遣待遇で働いた経験があり、派遣元の労組に入っていましたが、要求が直接、派遣先の局に届かず、歯がゆい思いをしました。「(派遣先の)局で働く人と同じ組合に入れること自体がすごいこと。直用化もかない、組合の存在を心強く感じます」と話しています。

■非正規「格差是正」さらに/古住公義副委員長

 KBS京都は15年10月、会社更生手続きでの完全弁済を終えました。再建達成の到達からみて、再建途上の厳しい時代を共にし、番組作りに貢献してきた一人である佐藤さんの要求に応える姿勢を追求し、相次いで2人の直用化が実現しました。非正規労働者も社員同様に仕事に貢献しており、格差是正を基本要求に、雇用、待遇の改善をめざす課題に引き続き取り組みます。

(写真上=直接雇用を喜ぶ佐藤さん〔右から2人目〕と古住副委員長〔同左〕、写真下=直用化制度適用で雇用継続が決まったことを祝う労組の仲間とAさん

(「週刊京都民報」12月17日付より)