写真の花はナスビにそっくりですが、ジャガイモの花です。よく似ているのはあたりまえで、ジャガイモはナス科ナス属でナス(茄子)とは同属なんです。
 写真は滋賀県近江八幡市の安土町にある常浜水辺公園横の畠に咲いているジャガイモの白い花です。手入れをしている女性は、「あっちは青色の花が咲いてるよ。ジャガイモにもいろいろ種類があるんで。今は年とって、売り物でなく家族の分だけ、チョットずついろいろな野菜をつくっています。結構楽しんでつくるんです」と笑顔で話します。
この常浜水辺公園は室町時代に当地の観音寺城の外港として栄えた常楽寺港の跡とのこと。今は干拓されて琵琶湖は全く見えませんが、石垣や歩道、清水がコンコンと湧く北川水路などの風情は往時をしのばせています。信長はこの梅の川の湧き水で点てたお茶が気に入っていたと伝えられています。安土城祉も含めて散策にはもってこいの地域です。
 トマトやトウガラシやタバコもナス科です。ですからジャガイモにトマトを接ぎ木すると地上にはトマト、地下にはジャガイモができます。ジャガイモは別名バレイショ〈馬鈴薯〉ともいいます。また、天保の大飢饉でジャガイモのおかげで餓死を免れたことから「御助芋」とも云われています。現代でも過去2回の世界大戦で多くの人命を飢えから救ったのがジャガイモと伝えます。学名はSolanum tuberosumで英名はpotato。中国名は馬鈴薯でなく洋薯といいます。原産はペルーやチリなどアンデス山脈で8000年前の大昔からインカ族の栽培植物になっています。ヨーロッパには16世紀頃伝わり、18世紀に急速に広がり、日本には関ヶ原の合戦の1600年頃にインドネシアのジャカルタからオランダ船が長崎に持ってきたのが起源とされています。ジャカルタから来たイモだからジャガイモ。イモ(芋・藷・薯)でもサツマイモやヤマイモなどのように塊根でなく、茎の一部がでっかくなった塊茎です。
 世界での主要生産国は中国でロシア、インド、ウクライナ、アメリカ合衆国(以上5カ国で世界の54%を占めています)とつづきます。日本では仏教倫理上から肉を余り食べなかったので、肉とよくあうジャガイモは食されていなかったようで、明治に入って急速に栽培されるようになりました。
 国内の生産は北海道が全国の8割を占めています。ジャガイモにもいろいろ品種がありますが、よく知られている男爵はサラダ、コロッケ、粉ふきいも向き、デンプンが少ないメークインは肉ジャガやシチューなど姿が残る料理に向いています。(草川俊著『野菜・山菜博物事典』他参照) (仲野良典)
 
「馬鈴薯のうす紫の花に降る  雨を思へり  都(みやこ)の雨に 」 (石川啄木)