ホトケノザ 立春を過ぎたとはいえまだ小雪ちらつく厳しい京の寒空です。でも、野原の小径に春の陽をいっぱい浴びて白いナズナの花やホワイトブルーのオオイヌノフグリの花、そして薄紫のホトケノザなどの可愛い花が咲き始めました。写真は伏見区向島の田圃の縁にナズナ、オオイヌノフグリと並んで咲くホトケノザの花です。
 
 ホトケノザ(シソ科のオドリコソウ属で学名はLamium amplexicaule)は1年草(または越年草)でヨーロッパから東アジアまで広く分布しています。花は唇形花(しんけいか)で上唇と下唇(蜜を吸う虫の足場になります)で花はパッと開かない閉鎖花(へいさか)です。
ホトケノザ(仏の座)のいわれは枝分かれしてのびた茎に何重にも対生して重なった半円形の葉っぱがちょうど仏壇の蓮華座のように見え、その真ん中から細長い花(仏像)が乗っかっているところから付けられました。
 仏教用語にかかわる草花の名には、ザゼンソウ(坐禅草)、ケマンソウ(華蔓草)、ニョイスミレ(如意菫)、トウバナ(塔花)、ホウチャクソウ(宝鐸草)やクリンソウ(九輪草)などがあり、すべて姿が似ているところからの命名です。ホトケノザの別名には重なった葉っぱが3段になっているのでサンガイグサ(三階草)やホトケノツヅレ(仏の綴)などとも言われています。カスミソウとも言うらしいですが、一般的には白い花のナデシコ科のカスミソウ(霞草)の方を指します。また、春の七草のホトケノザはまったく別種で黄色い花を付けるキク科のタビラコ(田平子)のことです。
 
 写真はまだ咲き始めたところで、もう少しすれば細長い花冠は2センチどの筒状になります。花を啜ると甘い蜜が余り目立たない地味な花です。でも、暖かい春を早く迎えたいと背伸びしているようで清楚でとても愛らしくて雑草扱いではかわいそうです。これから暖かくなれば川筋、畑の縁や道ばたなどの南向きの地に群れていっぱい咲くのでちょっと立ち止まって観れば心もホッとすると思います。(仲野良典)