イナカギク 秋まっただ中。朝晩はめっきり寒さを感じる昨今、野草の花々もめっきりと減ってきました。
 左京区賀茂川沿いにある府立植物園の約1000種類の植裁植物がある生態園も寂しくなってきました。植物生態圏もよく観察すると、長い房状の白い花を付けているサラシナショウマや小さな紫の花を散りばめてクロバナナキオコシやツリフネソウ、ホトトギスなどにまじって白いイナカギクが咲いています(写真)。
  
 イナカギク(別名ヤマシロギク〈山白菊〉:学名Aster semiamplexiaaulis)は、西日本の日当たりのよい山地に生える多年草です。葉っぱは6~12センチ、幅1.5センチほどで短毛があって少しざらついており、上半分は歯状。夏の終わりから晩秋にかけて茎の先っぽに2センチほどの頭花を写真のようにたくさんつけます。キク科シオン属でノコンギクやシオン、ゴマナなどと兄弟です。シロヨメナにとても似ており区別はなかなか難しいようですが、こちらはキク科ヨメナ属で従兄弟です。イナカギク(田舎菊)という日本名は地方の山地に生えているので植物学第一人者の牧野冨太郎が名付けました。
 
 ところで、キク科は高等植物のなかでもっとも大きな科で、各種の図鑑に占める分量も多く、名前を見分けるのがとても難しいです。専門書によりますと、世界中に広がって約920属、20000種もあるとか。日本には350種が野生(これらをまとめて野菊といわれます)しています。それに帰化した菊や観賞用に栽培されている園芸種などを含めると、多種多様で分類法も学者間で少し異なるようです。よく知られているように、頭花は一つ一つ独立した小花の集合体で、美しく目立って昆虫たちを引きつけて他花受精ができるような仕組みがあります。双子葉植物の中ではもっとも進化したグループといわれています。(仲野良典)
「名も知らぬ子草花咲く野菊かな」(素堂)
「秋草のいづれはあれど露霜に やせし野菊の花をあわれむ」(伊藤左千夫)