アスベストシンポ アスベスト(石綿)健康被害の危険性を再認識し、実態把握や対策の必要性について考えるシンポジウムが19日、京都市中京区の京都アスニーで開かれ、市民ら50人が参加しました。
 全産業での被害掘り起こしや建設アスベスト京都訴訟支援を目的に今年5月に発足した「アスベスト被害の根絶をめざす京都の会」が開いたもの。安価で耐火性や断熱性に優れ、建築材料として広く使われてきたアスベストは石綿肺や中皮腫、肺がんなど命に関わる健康被害を引き起こすことから先進各国では1980年代以降、相次いで使用禁止されましたが日本では製造メーカーの反発などで規制が遅れ、2006年に全面禁止されました。しかし、既存の建物には約500万トンのアスベストがあるとされ、正確な使用実態の把握や解体・廃棄・災害時の対策、国・製造企業の責任追及などが課題となっています。
 「京都の会」会長の石原一彦・立命館大学政策科学部教授が基調講演し、「現在、アスベストが原因で亡くなる人は毎年2000人~4000人と推定され、被害の規模はとても大きい。06年に石綿新法が創設されたが、労災対象とならない環境曝露(ばくろ)による被害者への救済額は低く、救済制度の充実が必要」と訴えました。
 全京都建築労働組合の酒井仁巳書記長、京都民医連中央病院副院長の津島久孝医師(呼吸器内科)、日本板硝子共闘労働組合の神田章一さん、「京都の会」事務局の新谷一男さんの各氏が報告。酒井さんは、労災認定の過半数を建設業従事者が占める一方で、肺がんが「タバコが原因」と診断されるなど多くの医療機関でアスベスト疾患が見逃されていることを指摘し、被害掘り起こしの重要性を指摘。新谷さんは、一昨年に教職員で初めてアスベスト疾患による公務災害に認定された滋賀県の元公立学校教諭の事例を紹介しました。
 立命館アスベスト研究プロジェクト・リーダーの森裕之・同大政策科学部教授は、「因果関係の特定が難しく、国民的な広がりがある以上、社会保障的に被害救済を進めないとアスベスト災害は終わらない」と今後の課題を提起しました。
 最後に、京都訴訟の今後のたたかいについて、原告弁護団事務局長の福山和人弁護士が報告し、寺前武夫さんら原告団が勝利の決意と支援を訴えました。