オオイヌノフグリ 5日の啓蟄でやっと春めき、日当たりのいい堤防には厳冬を耐えた蛇も久しぶりに日光浴しているのを見かけます。そんな宇治市の田圃の畦や堤防にはタビラコ、ホトケノザ、ナズナ、やオオイヌノフグリなど早春の風物詩の野草が一斉に花をつけはじめています。春先の野草の花は総じて小さくてかわいいです。わずか1~3ミリのノミノツヅリの花は歩いていても分からないぐらいで注意してじっくり見ないと見過します。雑草なので目にとまっても意識されないのかもしれませんね。
 そんな早春の仲間のオオイヌノフグリ(学名=Veronica arvensisi:ゴマノハグサ科クワガタソウ属:自家受粉し種をつくる:日が陰ると花は閉じる)は明治初期にヨーロッパ(ユーラシア、アフリカ原産とも)から渡来した帰化植物で、今では全国に広がっているようです。葉のわきから5~7ミリほどの小さい瑠璃色の花冠を1個づつ付けます。とても可愛いく、手でさわると花冠がポロリロとはずれてしまうほど華奢です。しかし、愛らしさとは裏腹に名前は犬の陰嚢(ふぐり)という説明するのがはばかるような愛嬌(?)のある名前です。イヌフグリの花はもっと小さくて目立たちません。この実が犬の陰嚢にホントによく似ているんです(学名=Veronica caninotesticulata:種名のカニノティクラタは「犬の睾丸」という意味。日本生まれといわれる)。
 イヌフグリのように人間が勝手に付けた可哀想な名前の雑草には、ヘクソカズラ、ワルナス、ヤブレガサ、ヌスビトハギ、ビンボウグサなどがありますが、早く名前を変えて欲しいのがママコノシリヌグイです。蔓草ですぐに広がり、引き抜くと小さなトゲで手が傷だらけになるやっかいな雑草。これで継子の尻拭いをして虐待したとか。継子と言う言葉も含めて許せない名前ですね。(仲野良典)
「午過(ひるす)ぎの花閉じかかる犬ふぐり」(松本たかし) 
「宇治の畦犬のふぐりも日だまりに」(良典)