農業振興に水差すな

元日吉町森林組合長元日吉町議会副議長 森茂さん

 私は1941年から満州へ4年8カ月間従軍し、戦後は地元の日吉町で農業をしながら町のために働いてきました。とくに55年から日吉ダムができるまでの40年間は首から重石をぶらさげられたようでした。53年の大洪水に始まり、ダム建設の話し合い、水没する150戸の補償問題など本当に苦しい日々でした。ダム問題で他の町村に比べて農業振興が遅れたのではないかと思っています。しかしその代償としてできたダムの水で農地の灌漑(かんがい)が進み、口丹波のおいしい米や野菜ができるようになりました。本当によい農産物ができていると思います。私も江戸期からの土地を守り、今も米35アール、黒豆12アールを作っています。TPPに日本が参入すれば、関税が撤廃され、アメリカなど外国から安い農産物がどんどん入って来ると聞きます。先祖代々の土地を守り、食の安定、安全安心の農産物を生産して来た営みに水を差すようなことはきっぱりとお断りしたい。(「週刊しんぶん京都民報」2012年10月14日付掲載)