国民の願い抑えつけ、財界支援政治

 ―道州制によって京都ではどういったことが起こると考えられますか?

 京都府は解体され、京都府地域と住民は「関西州」に吸収されていきます。京都らしい政策、大阪らしい政策といった地域の色合いに応じたきめ細かい政策はなくなります。たとえば府下の市町村に対する京都府独自の助成は、福祉や教育もふくめて、継続されなくなるでしょう。「関西州」の予算は、多くが大阪湾周辺の大企業が集中する地域に、阪神港湾の開発、高速道路や鉄道など関西空港へのアクセス強化などの形で落とされて、現在の京都府民にはますます遠い政治になっていきます。

「道州制」・規制緩和めざす「維新八策」

 ―「維新の会」の発表している「維新八策」とはどういうものですか?

 これは「維新の会」が衆議院選挙でのマニフェスト(公約)としてつくりはじめたものです。修正されて4種類が出されており、9月になって急に「日本維新の会」の「党綱領」という位置づけに変えられました。
 「維新の会」がやりたいことは、4種類目の「維新八策」の前文に集中的に表れています。短いものですので、全文を紹介しておきましょう。
 「中央集権と複雑な規制で身動きが取れなくなった旧来の日本型国家運営モデルは、もはや機能せず、弊害の方が目立つようになっています。今の日本を覆う閉塞感を克服し、国民の希望を取り戻すには、国からの上意下達ではなく、地域や個人の創意工夫によって社会全体を活性化し、グローバルな競争力を持つ経済を再構築する必要があります。そのためには国民の総努力が必要です」。
 いまの日本をダメにしているのは、「中央集権」と「複雑な規制」であり、それを転換する「地域や個人の創意工夫」が必要だというわけです。その転換の方向は、端的にいえば「道州制」と規制緩和(自己責任)です。それによって「グローバルな競争力を持つ経済」、つまり大企業をつくることができるので、そのために国民は「総努力」をしろというわけです。これもまた「大企業が潤えば、いまに国民も」という筋書きです。
 「八策」の細部には、ふれるゆとりがありませんが、憲法改正、日米同盟の推進など、経済問題以外の分野でも、財界が求める旧来型の政治そのままです。「維新の会」とは名ばかりで、実態は「国民総ガマンの復古の会」が正確です。
 「八策」には「企業・団体献金の禁止」が明記されていますが、橋下氏は9月になって企業献金を受け取る意向を表明しました。その後、さらに、これを取り消す方針が確認されたようですが、大企業・財界にすり寄りたいという希望があるからこその動揺といっていいでしょう。

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橋下人気に依拠当選のため「野合」

 ―同会は「日本維新の会」として国政政党になりましたが、組織としてどのような特徴がありますか?

 組織としての体を成していないと思います。基本的には橋下氏の個人人気に依拠したワンマン組織です。「大阪維新の会」についても「日本維新の会」についても「橋下氏の仲間だ」といえば選挙に当選しやすいという、ただそれだけのことで集まっている議員や候補者たちの組織です。共通の価値観は「野合」でしょうか。
 大阪市長選挙・府知事選挙では、既成政党や既得権益者への批判勢力であるかのように振る舞って一時的な人気を博しましたが、「日本維新の会」として全国民に姿を見せた時には、最初から既成政党とのごった煮です。自民党の安倍晋三元首相に党首への就任を呼びかけたり、政策ブレーンとして元自民党幹事長の中川秀直氏を引き抜こうとしたり、国政政党としての要件を満たすために、政策の違いを無視して民主党、自民党、みんなの党から「橋下ボーイズ」をかき集めるなど、既成政党に依存しなければ旗揚げもできませんでした。その意味では、大阪のように大きな人気を集めることは難しいでしょう。

国民が模索する「新しい政治」実現

 ―国民の願いに応える政治に変えていくには、どうしていけばいいですか?

 「維新の会」の本当の姿をよく知り、広めることが必要です。彼らは弱いものの味方ではありませんし、民主や自民の政治を転換するものでもありません。反対者を力で抑える強権的な政治を行います。そして「既得権益とたたかう」を売り物にしながら、最大の既得権益者である大企業・財界には、自分からすり寄っていくだけです。こうした実像を広めることが大切です。
 国民はこれまでの政治にかわる新しい政治を模索しており、消費税増税反対、TPP反対、脱原発・原発ゼロ、オスプレイ配備反対・基地撤去など大きな運動もつくられています。このどのテーマについても「維新の会」は「古い抵抗勢力」です。そこをクリアにするためにも「新しい政治」の具体的な形を急いで明らかにしていく必要があるわけで、この点では日本共産党に一層の努力を期待したいところです。

ネットを活用し世論を動かそう

 橋下氏や「維新の会」はツイッターやフェイスブックをつかって、「世論」を味方につける努力を大いにしています。他方でアメリカの「オキュパイ運動」、中東・アフリカの「ジャスミン革命」で、フェイスブックは大きな役割を果たしました。日本にもインターネットをつかって情報を集め、自分で判断し、自分で行動するという新しい社会層が急速に育っています。この状況に乗り遅れることなく、うまく対応していくために「京都民報」の読者のみなさんにも、これらの積極的な活用をよびかけたいと思います。(「週刊しんぶん京都民報」2012年9月30日付掲載)