橋下徹大阪市長は新党「日本維新の会」を28日にも結成しようとしています。衆院選を焦点にした国政進出が狙いです。橋下氏のめざすものと同会の実態について、〈上〉に続き、京都の各団体関係者の危ぐの声を紹介します。

 橋下氏は、知事時代に大阪センチュリー交響楽団(現・日本センチュリー交響楽団)への補助金を廃止したのをはじめ、大阪市長として「文楽協会」への補助金を削減するなど大阪の文化、伝統も切り捨て対象にしています。

“芸術貧国”への暴走

「劇団京芸」代表 藤沢薫さん

 「地方分権」を勇ましく叫んで登場した橋下氏の本性は、憲法九条を敵視したタカ派発言や市職員への「思想調査」という人権侵害の暴挙に表れているように、極めて危険な人物です。
 その矛先は文化にも向けられています。今、300年の歴史を持つ伝統芸能の文楽が窮地に追い込まれています。私は一人の同級生のことを思い出さずにはいられません。彼は大阪市職員として、国立文楽劇場開場(1984年)に携わるなど、戦後の文楽再建に粉骨砕身した人でした。文化庁(当時)とのやり取りで東京出張を繰り返し、生前、「命がけなんだ」という言葉も聞きました。彼が生きていたら、何と言うでしょうか。あまりにも野蛮なやり方に言葉を失います。
 文楽は一人ではできません。太夫、三味線、人形遣いがあって成り立つ、オーケストラ同様に集団芸術です。公的助成がなければ、維持していくために公演入場料は高額となり、国民から鑑賞の機会を奪うことになります。日本は今でも、欧州などに比べて、文化・芸術への予算が乏しい国です。日本をさらに文化・芸術貧国へと導く政治を許してはなりません。(「週刊しんぶん京都民報」2012年9月30日付掲載)