知性集め再検討を

建築家、DOCOMOMO Japan会員 篠田義男さん

 京都会館の保存に当たっては、「リビング・ヘリテージ(生きている文化遺産)」として、京都会館であるための本質的歴史的価値を損なわないよう慎重に配慮しながら改修し、使い続けることが大事だと思っています。
 想定されていないオペラを上演するなど、過大なプログラムに追随した機能強化、利便性だけを追及していくだけでは、近代建築を遺すということにはなりません。
 設計者・故前川國男は、近代建築を京都の伝統的な景観に適合させるため苦労を重ね、岡崎の、あるいは京都に共鳴する空間を作る事に、見事に成功しました。
 建築は時代の象徴です。建物が完成した1960年は、戦後日本の精神が高揚した時代です。市と市民が一緒になって建物をつくりあげたことから見ても、京都会館はこの時代の象徴であり、一つの文化的到達点とも言える建築だと思います。
 解体工事は1日を争うものではないはずです。京都の知性を集めた透明性のある委員会を改めて設置し、計画の再検討を行うことが望まれます。(「週刊しんぶん京都民報」2012年9月9日付掲載)