日本共産党京都市議団(山中渡団長、15人)は12日、市が発表した「原発事故対応暫定計画」について、「避難対策や情報収集体制も全く不十分」で「市民の命も安全も守れない」と指摘し、「原発の再稼働中止・原発ゼロの決断こそ、最大の防災対策」とする「声明」を発表しました。以下、全文を紹介します。


[声明]原発の再稼働中止・原発ゼロの決断こそ、最大の防災対策~京都市原子力発電所事故対応暫定計画について~

日本共産党京都市会議員団

 大飯原発の再稼働に国民の多数が反対・慎重な姿勢を求めているにも関わらず、野田首相は再稼働を強行しようとしています。京都市は6月13日に防災会議を開催し、4月策定した原発事故対応暫定計画を報告、承認を求めるとしています。党議員団は原発再稼働、京都市の暫定計画についての見解を明らかにするものです。

大飯原発再稼働の中止、原発ゼロの政治決断を

 野田首相は6月8日、「国民生活を守るために必要だ」と大飯原発の再稼働実施を表明しました。福島原発事故の原因究明に程遠く、政府が必要とした「安全対策」さえ取られず、まともな原子力規制機関もないもとで、国民を危険にさらす最悪の判断に日本共産党市会議員団は、強く抗議します。京都市長は直ちに「やむを得ない」と理解を示しましたが、現時点で再稼働を容認するなど許されません。
 策定された暫定計画は、国の原子力安全委員会のワーキンググループがまとめた緊急時防護措置を準備する区域(UPZ)を基に対象範囲(30キロ圏)と対策を定めるにとどまり、住民の避難計画は108世帯、223人と限られた対象地域のみとされています。高浜原発、大飯原発の事故による京都府、滋賀県の放射能拡散予測は、京都市内に広範囲に影響を及ぼすものとなっており、最悪の場合は複数の原発で事故が発生する可能性もあり、計画対象範囲は少なくとも80キロ圏内を想定し、見直すべきです。放射能は30キロ圏外に拡散しないという新たな安全神話をつくることは許されません。政府の新たな安全神話と歩調を合わせた京都市の計画は、過酷事故に対応する計画とはいえない内容となっています。
 本来、国の責任で防災指針等の見直しを行い、原子力災害対策特別措置法の位置づけを明確にすべきであり、京都市域全域を対象地域に含めるよう積極的に働きかけるべきです。

京都市の暫定計画では市民の命も安全も守れない

(情報収集と周知徹底)
 計画では、「府や関西電力から連絡を受ける」としていますが、福島第一原発事故では、立地自治体にさえ、事故そのものの情報も、放射能汚染の拡散予測の情報も、国・東京電力から提供されることがありませんでした。国及び関西電力が情報提供に責任を果たすことは当然ですが、正確な情報をいち早く収集するために、独自の情報収集体制の整備と監視体制の強化が求められます。その情報をいかに市民や滞在者に伝えるかが決定的です。暫定計画では、過酷事故に対応した体制とはなっていません。さらに、関西電力との協定の締結もないままです。
(モニタリング体制)
 平常時モニタリング体制は強化されたものの、独自のモニタリングは5箇所(花背出張所、京北出張所、市役所、山科区役所、西京区役所)にとどまり、可搬式サーベイメーターによる測定は週1回です。これでは、いち早く放射能汚染の変化を把握できず、重大な対応の遅れを生じる危険があります。水道水のモニタリング体制の強化が図られたものの、実際の測定は8月からであり、直ちに対応できるものとは言えません。
(避難措置計画)
 避難計画があるものの、30キロ圏内に隣接する地域(久多・広河原)の223人にすぎず、近接した避難所に避難するための移送手段が確保されるのは、その半分にとどまっています。被曝防護のために現地から離れる必要も生じますが、その先の避難場所は想定すらされていません。
大飯原発の事故を想定した滋賀県の放射性ヨウ素の拡散予想を踏まえれば、ヨウ素剤の備蓄と配布に対する計画を持つとともに、市立病院を被曝医療機関として位置づけ、機能強化することが求められます。
(風評被害対策)
 市内農産物、観光客などに対する風評被害対策が位置づけられているものの、放射能による汚染の影響がないことを前提として、影響を軽減する対策となっています。放射能汚染した場合の対策はありません。

再稼働を中止し、原発ゼロの政治決断こそ最大の防災対策

 市民のいのちと安全を守る最大の防災対策は、原発ゼロの政治決断を行い、危険な原発は再稼働しないことです。日本共産党京都市会議員団は、原発ゼロをめざして全力をあげます。