京都市が進める京都会館(左京区岡崎)の全面建て替え計画を検討してきた市の諮問機関「京都会館の建物価値継承に係わる検討委員会」(岡﨑甚幸・武庫川女子大学教授)は、「建物の歴史的な価値や周辺の風致を損なわないよう」、高さを抑えることなど異例の14項目の提言を発表(4月23日)しました。同委員会副委員長を務めた石田潤一郎・京都工芸繊維大学教授に、委員会の議論や提言の内容について聞きました。

――諮問を受けた委員会が、市の計画に数多くの注文をつけることはめったにないですね。どんな委員会だったのでしょうか。
京都会館建て替え計画 石田 一言で言えば、異例づくめの委員会でした。
 1つ目は、設置の経過とメンバーです。
 既に、日本建築学会、京都府建築士会、日本建築家協会近畿支部京都会など建築に係わる職能団体はそれぞれ、市に京都会館保存の要望書を提出していました。これに応えて、市が委員会を発足させたもので、画期的なことです。
 しかも、委員を決めるに当たり、各団体に委員の推薦と参加を要請してきました。これを受け、私は日本建築学会の推薦で委員となりました。
 建築家協会近畿支部京都会や京都府建築士会などには、当初委員要請は1人でしたが、それでは少ないとの要望を団体が主張され、各1人ずつ計2人が委員となりました。各界を代表する委員で委員会が構成されたことは大きな意義を持ちます。
 市がこうまでして、委員会を設置した背景には、京都会館を守れとの大きな世論、現在の会館の建築に対する高い評価があったことは言うまでもないと思います。
――このほかにも、どんなことが異例だったのでしょうか。
 石田 市の姿勢の問題です。委員会を設置して、保存の要望に応えたいという思いがある一方、市が策定した、建物の高さを約31メートル(現行27.5メートル)にして、第1ホールを建て替える再整備基本計画の根幹は変えられたくない、この姿勢が貫かれた委員会でした。
 本来、委員会は、同計画策定の前に設置すべきです。ところが、市はすでに基本設計を香山壽夫建築研究所に委託し、5月までにまとめることを決めていました。そのため、委員会の論議と同時進行で、基本設計の作業が進むという、あり得ない事態になりました。
 しかも、市は同計画を前提に、「ロームと命名権の契約締結をしている」と述べ、委員会での議論に枠をはめてきました。当然、委員会の議論は紛糾しました。これも異例です。
第1回目に委員から「ガス抜きの会にしてはならない」と釘を刺す発言が出たほどです。私も「1㌢も計画を動かせないというのなら、一体何のためにここにいるのか分からない」と市に抗議しました。
 当初委員会は、4回で終了予定でしたが、5回目を開き審議をつくしました。
 次回、委員会が提言した具体的内容を解説、紹介しましょう。(「週刊しんぶん京都民報」2012年5月20日付掲載)