「提言」懇談会  志位委員長の報告

志位和夫委員長

 お集まりのみなさん、こんにちは。ご紹介いただきました日本共産党の志位和夫でございます。今日はお忙しいところ、たくさんの方々が足をお運びいただきまして、まことにありがとうございます。まず心からのお礼を申し上げたいと思います。
 民主党・野田政権は、2014年に8%、2015年に10%と消費税を大増税する計画を、「社会保障と税の一体改革」という名ですすめようとしております。全国どこを歩いておりましても、不安と怒りの声が聞こえてまいります。
 同時に、それでは安心できる社会保障をどうやってつくるのか、財源はどうするのか、国と地方の財政危機をどう打開していくのか。これらの問題について、多くの国民のみなさんが、答えを求めていらっしゃると思います。
 私たち日本共産党は、野田政権の大増税計画には断固反対の立場を貫くとともに、社会保障充実、財政危機打開をどうすすめるかについての抜本的対案が必要だと考えまして、この「提言」をつくりました。
 この「提言」は、今日はパンフレットでお渡ししてありますが、1年半かけて、練りに練って数字的な試算も充分した上で出したものです。
 私は、まず政府が「一体改革」の名ですすめている大増税計画の問題点がどこにあるか、そしてこの私たちの「提言」の中心点、この2つの話を報告させていただきたいと思います。どうか最後までよろしくお願いいたします。

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「一体改革」の名で進められている政治の大増税計画の問題点

「3つの合理化論」のウソ
 まず野田政権がすすめている「社会保障と税の一体改革」なるものの問題点についてご報告させていただきたいと思います。
 ここに政府の「一体改革大綱」の文書があります。ここに消費税の大増税の計画が書いてあるわけですが、その冒頭の部分――「はじめに」という部分で、増税をすすめる理由として、「3つの合理化論」が書いてあります。
 第1は、「社会保障の充実と安定化」がはかられる。あたかも社会保障がよくなるかのようなことが書いてあります。
 第2に、「社会保障の安定財源確保と財政健全化が同時達成される」。財政の展望が出てくるかのようことが書いてあります。
 第3に、「経済成長との好循環が達成」される。経済もよくなると書いてあります。
 消費税を上げると、社会保障もよくなる、財政もよくなる、経済もよくなる。バラ色の日本ができますといわんばかりのことが書いてあるわけですが、結論から言いますと、これはすべて成り立たない話です。3つとも国民を欺くウソだということを、はっきり言わなければなりません。
 私は、「提言」を発表した3日後の2月10日に、衆院予算委員会で、1時間ほどかけて野田総理と論戦をいたしました。そこで明らかになった点も含めて、話していきたいと思います。

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社会保障改悪と消費税増税との「一体改悪」

 第1に、「社会保障の充実と安定化」と言いますが、今度の「一体改革」で、社会保障はどうなるのかという問題です。
 消費税を5%から10%に値上げしますと、13・5兆円の増税です。目がくらむような大増税です。「そのうち、社会保障の新たな充実に使われるお金はいくらですか」と聞きますと、政府の答弁は「消費税1%分の2・7兆円です」というものでした。つまり、残り4%分は既存の財源に消費税が置き換わるだけで、社会保障の新たな充実には使われないということになります。たった1%分というのです。
 それでは、今度の「一体改革」なるもので、削減される社会保障はどれくらいか。お渡ししたパンフレットの22ページのグラフをご覧ください。
 まず、2015年までに、年金の給付が連続的に削減される計画です。子ども手当て削減、医療費の窓口の負担増、介護の利用料の値上げなどで、あわせてちょうど2・7兆円も削減されてしまう。「充実」分の2・7兆円がまるまる吹っ飛んでしまいます。
 それから「中長期の計画」とされていますが、年金支給開始年齢の引き上げで、6兆円から10兆円の実質負担増になります。こうして、「充実」分をはるかに超える切捨てのメニューがずらりと並んでいます。
 さらに、2・7兆円の「充実」というものも実は怪しいんですよ。「充実」というが、この中には国民を苦しめるいろいろな「毒」が入っています。政府が「充実」の目玉としているのが、「子ども・子育て新システム」ですが、この新しい保育の仕掛けというのは、児童福祉法を改悪して、これまで市町村が負っていた保育への義務をなくしてしまおうというものなのです。そうなりますと、お父さんお母さんが直接保育園を探して、自力で契約しなければならなくなる。
 待機児童が大問題になっていますけれども、その解消にもまったく逆行してきます。わが党の田村議員が、この問題を取り上げまして、「新しいシステムになったら、待機児童の数をつかむんですか」と聞いたら、小宮山厚生労働大臣は「(法律では)数を把握することにはなりません」と答えました。なぜ市町村の保育への義務付けをはずすのかと田村さんが聞いたら、小宮山大臣の答弁はふるってました。「義務付けしていてもこんなに待機児童が増えるんだから、はずすんだ」と言うのです。それを言ってはおしまいですね。社会保障がよくなるどころか、どの分野をみても、切捨てだらけというのが実態です。
 社会保障については、国会質疑のなかで、ひどい議論がでてきました。民主党の前原政調会長が、「社会保障は無駄の宝庫だ。いかに切り込んでいくかが大事だ」と言って、生活保護の医療扶助の切捨てなどを政府に公然と求めました。「社会保障は無駄の宝庫」――よくもこんな冷酷な言葉が出たものです。「無駄」というなら、その象徴となっている八ツ場ダムを、いったんは中止すると言ったのは誰ですか。中止するとあれだけ大騒ぎして、結局は建設をすすめると裏切ったのは誰ですか。ああいうムダ遣いは平気ですすめながら、社会保障は情け容赦なく削っていく。「ムダの宝庫」とこんな冷たい言葉は、私は、自民党時代でも聞かなかった言葉だと思います。
 「一体改革」と言いますと、何となく、社会保障は良くなるんじゃないかと、お考えの方もいらっしゃるかも知れないけれど、実は社会保障改悪と消費税増税との一体改悪なんだということを、まず私は強調したいと思うのであります。

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「安定財源」どころか、財政を不安定にさせる

 第2に、消費税を増税すれば、社会保障の「安定財源」を確保し、「財政健全化」が「同時に達成」される。つまり財政がよくなる。いったい、こんな理屈が成り立つのかという問題です。
 パンフレットの28ページのグラフをご覧ください。消費税を5%に増税する前の年の1996年度と、直近の2010年度の国と地方の税収を比較したものです。比較しますと、たしかに5%に上げたおかげで、消費税の税収はしっかりと増えております。しかし、他の税収が減ってますでしょう。その結果、税収の総額は、90兆円から76兆円に14兆円も落ち込んでいます。14年間の累計で計算しますと、84兆円もの税収が減っています。その分、借金が増えることになりました。
 その最大の原因は、消費税増税をきっかけに、景気が悪化し、日本経済の長期にわたる後退と停滞が続いているからです。さらに、大企業と大金持ちへの減税をやった。両方が相まって、税収の空洞化が起こっている。ここに1番の問題があります。
 消費税を増税しても、経済を悪くしてしまったら、全体の税収は減るのです。消費税増税というのは、社会保障の「安定財源」確保にもつながらないし、「財政健全化」にも役に立たないということが、事実をもって証明されているのではないでしょうか。
 よく、消費税増税派は、こんなことを言うんです。「消費税は、景気に左右されない安定財源だ」。たしかに消費税だけ見れば、景気に左右されません。税金を、取る方の側からいったら、景気がよかろうが悪かろうが、消費税はがっぽり必ずとれます。しかし取られる方からいったら、景気が悪くても払わないといけないのが消費税ですから、こんなにつらい税金はありません。
 消費税増税というのは、消費税だけを見たら、たしかに税収が増えるかもしれないけれど、税収の全体を見たら、「安定化」じゃなくて、「不安定」にさせるというのが特徴だということを私は言いたいと思います。

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日本経済ささえる家計消費と中小企業に大打撃

 第3に、「経済成長との好循環が実現する」というけど、本当でしょうか。私は、こんな理屈が政府の文章に堂々と出てくること自体が、はっきり言って噴飯ものと言いますか、荒唐無稽と言いますか、脳天気と言いますか、どう表していいかわからないようなことだと思います。平気で、「消費税をあげたら景気がよくなる」ということを書いていること自体が、日本の経済について、政府がいかにまじめに考えていないかを証明するものだということを強く言いたいと思います。
 いま消費税を大増税したら、日本経済はどうなるのか。2つの大問題が引き起こされてまいります。
 1つは、日本経済の6割を占める家計消費への打撃です。パンフの30ページのグラフをご覧ください。1997年に、消費税を5%に上げることをはじめ、「9兆円負担増」というのが強行されました。橋本内閣のもとでおこなわれたものですが、このときは、グラフをご覧いただけたらわかるように、所得も消費も伸びつつあった時期だったんです。景気が回復しつつある時期だったんです。それを上回る「9兆円負担増」で、景気の底がぬけてしまったというのが、このときの経験でした。
 私は、当時(1997年)、橋本首相と国会でさんざん論戦し、私たちの試算も示して、いま増税したら景気の底が抜けてしまいますよと言いましたら、橋本さんは答弁できなくなって、「それも1つの見識です」と言わざるをえなかった。増税が強行され、やはり景気の底がぬけてしまうという結果になりました。1年後、橋本首相と再度国会で論戦して、「反省すべきではないか」とただしますと、「消費税増税の影響があった」と認めざるをえなかった。これは誤りだったと決着がついている問題なんですね。
 ところが今度はどうでしょう。今度の大増税計画は、その後、長期にわたって、所得も消費も減っているもとでの大増税です。ただでさえ減っているところに、消費税の増税で13・5兆円の負担増、社会保障の負担増と給付減などで、あわせますと20兆円を超える巨大負担増が、どーんとかぶさってくる。この影響がどれだけのものになるかは、ほとんど想像もつかないものだと言わなければなりません。家計消費がいよいよ大きく後退し、冷えこむことは間違いありません。
 いま1つの大問題は、日本の雇用の7割を支えている中小企業がどうなるかということです。パンフレットの33ページのグラフをご覧ください。これは日本商工会議所など中小企業4団体による詳細な調査結果です。「消費税が引き上げられた場合、販売価格に転嫁できるか」という問いに対して、5割から7割という中小企業が、「転嫁はできない」と答えておられます。
 私は、予算委員会での質問を準備する過程で、中小業者のみなさん、自営業のみなさんに集まっていただいて、お話をうかがいました。現在の5%でも転嫁はできないという深刻な実態がたくさん出されました。転嫁できない場合、身銭を切って払っている。「身銭を切る」というのはどういうことなのか。自分の保険を解約して消費税を払う。定期預金を下ろす。家族に無給で働いてもらう。ささやかな不動産を切り売りする。最後には泣く泣く人件費に手をつけざるをえない。こういう話が出てきます。
 下請けの中小企業の方にお話をうかがいますと、こういうことも訴えられました。大企業は、販売価格に消費税を上乗せして売りたくない。そこで、消費税があがった時に、その分を下請けの単価切り下げにかぶせてくるというのです。消費税があがった時に、下請け単価に消費税分を上乗せして払うどころか、逆に切り下げてくる。こういうやり方で、下請けの中小企業が苦しんでいるというお話もうかがいました。
 これが、10%になったら、日本から商店街がなくなり、町工場がなくなり、雇用を支えている中小企業の倒産、廃業が激増するという不安が、たくさんの方から私たちに届いております。
 私は、こういう状況を突きつけて、野田首相に、「転嫁できない場合、どうやって払うんですか」と聞きました。どうやって払うか答えられません。何と答えたかというと、「転嫁できる環境をつくります」。安住財務大臣などは、「安心して転嫁できるような環境をつくります」と答えました。「転嫁できる環境をつくる」というけれど、消費税が始まって以来23年間、「転嫁できない」という問題はずっと続いてきたわけでしょう。それが、5%から10%になったら、急に転嫁できるようになるわけないじゃないですか。私は、政府のこのひどい答弁を聞いて、本当にこの人たちは中小企業の実態を何もわかってないなということを強く感じました。
 いま日本経済は、長期にわたるデフレです。デフレというのは、需要が足らなくてモノが売れず、モノの値段が下がることです。そういうもとで、消費税増税が強行された場合、小売り価格に上乗せできるかと聞きますと、ほとんどの方から「難しい」という答えが返ってきます。そんなことやったらますます売れなくなる。
 だいたい、世界の先進国で、デフレという現象がこんなに長期にわたって続いている国などというのは、日本以外にないですよ。歴史上もないです。「デフレ下での消費税の大増税」などということは、世界のどこでもやったことのないことなんです。私は、それは、想像をこえる破局的な影響を日本経済にあたえると思います。
 家計消費と中小企業は、日本経済を支える「2つの柱」であります。そこに甚大な打撃となるのではないかとただしても、政府からまともな答弁が1つもない。考えてもいない。私は質問をしながら、これは恐るべきことだと思いました。
 この長期不況がつづくもとで、追い討ちをかける大増税ということになりましたら、政府が底なしの「大不況運動」の引き金を引くことになります。
 この政府の文書には、「3つの合理化論」があったけれども、全部だめになります。社会保障がだめになる。経済もだめになる。財政もだめになる。それこそ日本をお先真っ暗のドン底に突き落としてしまうというのが、いまの増税計画です。
 まずは、野田内閣の大増税計画に反対するという一点で、力をあわせようということを心から呼びかけたいと思います。

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日本共産党の「提言」の考え方の基本点について

 政府がすすもうとしている道は先がない。ですから考え方を変える必要があります。政治の姿勢を大本から変える必要があります。そういう立場で、根本的な別の選択肢としてこの「提言」を作成いたしました。
 つぎに、日本共産党の「提言」について説明していきたいと思います。この「提言」の細目については、ぜひ「提言」そのものをお読みいただきたいと思います。私は、この「提言」を作成するにあたって、私たちが設計思想といいますか、基本的な考え方に据えたことについて、大まかに言って4点ほどお話をさせていただきたいと思います。

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「社会保障の段階的充実」と「民主的経済改革」を同時並行で

 第1は、この「提言」が、「社会保障の段階的充実」と「国民の所得を増やす民主的経済改革」を、「2つの柱」にして、同時並行ですすめるという立場に立っている。この同時並行論が、この「提言」の1番の眼目の部分でございます。
 さきほどのべたように日本経済は、長期にわたる停滞、後退の状況におちいっております。この現状をそのままにして、その枠のなかでいくら歳出、歳入の回復をやっても絶対に展望が開かれてまいりません。「国民の所得を増やす民主的経済改革」を同時並行ですすめてこそ展望が開かれてまいります。
 すなわち労働、中小企業、農林水産業、エネルギーなどの各分野で、国民の暮らしと権利を守るルールをつくり、国民の所得を増やす改革を実行していく。
 労働の分野でいいますと、非正規雇用労働者が36%に達しています。こういう不安定、「使い捨て」の労働をなくして正社員にする。最低賃金を大幅に引き上げ、中小企業には賃金助成をやりながら、賃金の底上げをはかる。各分野で、国民の所得を増やす経済改革を実行します。
 この改革をすすめることで、大企業に蓄積された260兆円の内部留保が、社会に還流されるようになります。そして経済を内需主導の健全な成長の軌道にのせてまいります。経済全体のパイが大きくなってくる。そのことで税収が増えてきます。そして社会保障をよくする本当の意味での安定財源をつくるとともに、財政危機打開の道を開こうというのが私たちの考えです。
 「国民の所得を増やす民主的経済改革」と同時に、第1の柱である「社会保障の段階的充実」をすすめます。社会保障をよくするということは、2つの面で経済にもプラスに働きます。
 1つは、国民の暮らしを支え、将来不安を軽減し、消費マインドをよくします。社会保障の安心が得られれば、「お金を使ってみようか」ということになります。
 いま一つ、福祉を充実することは、地域の仕事と雇用を増やすことにつながるということです。地域経済をあたためることになります。
 こうして、2重に経済効果がある。「社会保障の段階的充実」と「国民の所得を増やす経済改革」──この両方をすすめることが、相乗作用となって、社会保障、経済、財政の3つの分野で一体的に問題が解決する方向にすすむだろう。循環でいいますと、経済を良くする、このことで財政をよくする、社会保障を良くする財源をつくる、そうすると経済もよくなる──この好循環をつくっていきたい。いまは、ここが悪循環になっている。それを好循環に変えていこうというのが、提言の一番の眼目の部分でございます。

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財政危機の歴史的な原因をふまえた提案

 これは財政危機の歴史的な原因をふまえた提案ともなっております。
 どうして日本の財政がここまで悪化したか。
 1990年代までは、財政危機の最大の原因は、巨大公共投資をはじめとした歳出面の無駄使いにありました。アメリカから押し付けられた10年間で430兆円、のちに630兆円になりましたが──「公共投資基本計画」というのがありました。これがテコになって、日本中に無駄なダム、無駄な港湾、無駄な空港などが、どんどんつくられ、これが財政危機の主役になったのが90年代でした。
 2000年代にはいりますと、さすがに無駄な公共事業のばら撒きは続けられなくなり、総額は縮小するのですが、代わりに財政危機の主役になったのは、先ほどのべた税収の空洞化でありました。その原因は、大企業と大金持ちへの減税のばらまきとともに、経済そのものが長期の停滞、後退に陥ったところにありました。
 ですから日本経済の停滞、後退を打開して、内需主導の健全な成長の軌道にのせるということは、財政危機を打開するうえでも2重の効果が働いてまいります。
 第1は、経済成長によって税収そのものが増えてきます。あとで具体的な数字は話したいと思います。
 第2は、対GDP比の長期債務残高が減少にむかう展望が開かれてまいります。欧米諸国も、政府の長期債務残高を見ますと結構ふやしているんですよ。日本より増やしているところも少なくありません。ただ、どこでも経済成長はしていますから、GDP比の長期債務残高の比率をみますとのびが小さいんです。日本は、この20年間ほど、GDPがまったく伸びていないでしょう。借金だけが伸びている。ですから、借金の伸びが、GDP比での長期債務残高の悪化に直結してしまうわけです。日本経済を内需主導の安定的な成長の軌道にのせるならば、対GDP比での長期債務残高を減少に向かわせる展望を開くことになります。
 こういう2重の意味で、財政危機打開の道を開くことになるということを強調しておきたいと思います。
 私たちの試算を紹介しますと、「提言」が提案している社会保障、税財政、経済の民主的改革をおこなうことで、2040年ごろまでの平均の名目成長率は、年2・4%程度が可能だと見込んでおります。賃金も伸び、物価も上ってきますから、実質ベースでいいますと年間1%強の成長が可能となってきます。そうしますと2030年ごろまでには基礎的財政収支が黒字化し、対GDP比の長期債務残高も減少にむかうというのが、私たちの展望です。18年ぐらいかかりますけれども、借金財政からの脱出の道が開かれる。もうちょっと早くやれないものかということも検討しましたが、財政赤字からの脱却を無理してすすめると、経済を壊して元も子もなくなるということになります。一定時間はかかりますが、18年ぐらい後には、打開に道が開かれるというのが、私たちの見通しだということもご報告しておきたいと思います。

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社会保障─段階的拡充のプログラム

 第2は、社会保障を拡充するうえで、私たちは今回の「提言」で段階的アプローチという提案を行っているということです。つまり財源を段階的に確保しながら、段階的に社会保障を良くしていくという2段階での提案をしております。これは、今回の「提言」の新しい提案の仕方となっています。
 第1段階では、「社会保障再生計画」と銘打っておりますけれども、小泉内閣以来のいわゆる「構造改革」路線で社会保障があらゆる分野で壊された。これを「再生」させよう。同時に、急を要する一連の改革の課題でも取り組んでいこう。この第1段階の財源は、まず無駄遣いを一掃と、富裕層・大企業への応分の負担でまかなってまいります。
 だいたい2010年代の末ぐらいまでに、第1段階の「再生計画」を達成して、第2段階の「先進水準の社会保障」の実現にすすんでいきたい。ここではヨーロッパの多くの国であたりまえになっている水準へと日本の社会保障の水準を抜本的に高める計画を実行していきます。そのための財源は、累進課税を強化する所得税の税制改正でまかなっていきたいというのが私たちの提案です。
 たとえば年金をどうするか。いまの年金の1番の問題といいましたら、自公政権時代の年金大改悪によって、支給水準がどんどん減っていく。無年金、低年金の方がたくさんいらっしゃる。これらの問題を解決することが焦眉の問題です。第1段階では、年金が減っていくようなしくみは撤廃して、「減らない年金」、将来的に安心できる年金にしていく改革をおこないます。それから受給資格期間というのがいまの年金にはあります。25年間保険料を払わないと一円ももらえない。こんな国は世界にありません。これを10年に短縮して、それと同時に、すべての受給者の方に満額支給の場合と同じように月3万3000円の国庫負担を支出して低年金の底上げをはかる。
 第2段階では、最低保障年金制度の確立に本格的に踏み出すという提案をしております。最低保障額は月5万円をスタートにしてだんだん上げていきます。そのうえに保険料に応じた額を上乗せし、無年金、低年金の問題の抜本的に解消をはかる道を開いていくのが、第2段階です。
 医療をどうするか。医療についていいますと、相次ぐ窓口負担の引き上げで、お金の心配でお医者さんにいけない、受診抑制が極めて深刻です。第1段階で、「提言」が提案しているのは、まず、医療費の窓口負担を国の責任で「子どもは無料、現役世代は2割、高齢世代が1割」というところに下げよう。最初から全部無料にといいたいところですが、他にも急を要する問題があります。国民健康保険料が高すぎて払えないことも大問題です。高すぎる国保料について、国の責任で1人1万円の引き下げをおこなう。
 そして、第2段階で、多くの欧州の主要国で行われているように、医療費の窓口負担は無料にする。たとえば、イギリスにいきますと、私たちの「しんぶん赤旗」の特派員が病院にいきますと、「会計窓口」があるにはあるのですが、医療費を払う窓口ではありません。病院の側が患者さんに交通費を払う窓口となっている。それぐらい徹底して窓口負担はなしとなっている。これがヨーロッパでは当たり前ですから、第2段階ではそこまで進みたいと考えています。

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なぜ段階的アプローチか──2つの理由

 なぜこの段階的充実の提案をおこなったか。
 理由が2つございます。
 1つは、小泉内閣以来の「構造改革」路線による社会保障の破壊というのはあまりにひどくて、その傷跡は、医療、年金、介護、障害者福祉、生活保護、あらゆる分野に及んでおります。この傷跡を治す、再生させるという仕事自体が1大事業になっています。そこから第1段階でまず「再生」を、第2段階で「抜本的拡充」をという段階的なアプローチが必要になってきます。
 いま1つの理由は、財源を考えても、段階的なアプローチがどうしても必要になってきます。第1段階の改革を実行するために私たちが財源として考えているのは、無駄使いの一掃と富裕層と大企業に応分の負担を求めるという税制改革です。これは今すぐでも着手できることです。ただ第2段階の改革を実行するために、私たちが財源として考えているのは、所得税の累進課税の強化です。これは、一定の国民のみなさんに新しい負担をお願いするということになってきますから、すぐには実行できません。
 すなわち、「提言」が2つ目の柱に位置づけている「民主的経済改革」を実行に移すことによって、国民の賃金・所得が着実に増え続けるという状況になってはじめて、所得税の改革ができる。それには一定の時間がかかります。
 こういう理由から、段階的なアプローチということを考えました。この方策は、社会保障の現状にてらしても、財源を考えても、最も合理的かつ無理のない提案だということを、強調したいと思います。

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税金は「応能負担」─「負担能力に応じた負担」を原則に

 第3に、「提言」では財源の考え方を180度変えております。政府の考え方は財源といえば消費税、それしか頭にうかばない。この路線でいきますと、10%では足りません。足らなくなったらまた消費税、15%にしましょう、20%にしましょう。際限がありません。この考え方を、根本から変える必要があります。
 税金というのは「負担能力に応じた負担」──「応能負担」を原則にする。大企業や富裕層優遇の税制を切り替えて、民主的税制の根本原則である「応能負担」にたった税制改革を行う。この考え方を徹底して貫きます。
 第1段階では、無駄使いの一掃とともに、富裕層と大企業に応分の負担をもとめる一連の税制改革を具体的に提案しております。
 無駄使いの一掃ということでは、米軍への「思いやり」予算をはじめ軍事費にメスを入れる、八ツ場ダムなど無駄な巨大開発を見直す、原発推進予算に抜本的メスを入れる、さらに、320億円の政党助成金はなくす。こういう民主党政権が「聖域」としている分野にメスを入れていきます。
 そして、増税というなら、まず負担能力をもっている大金持ちと大企業に応分の負担をというのが私たちの考えです。
 この点では、「提言」では、誰が考えても文句のつけようのない無理のない提案となるように心がけました。たとえば「提言」では富裕層への課税について、一連の提案をしておりますが、どれも無理のない当たり前の提案です。
 パンフレットの38ページのグラフをご覧ください。これは申告所得階級別の所得税の負担率を示したものです。驚くことに、所得1億円をピークに負担率が下がってしまっています。なぜ下がるかと言いますと、3つ原因がありまして、所得税の最高税率が大幅にこの間引き下げられました。2つ目に、証券取引や土地取引の所得が分離課税とされて税率が低くなっている。3つ目に、とりわけ証券優遇税制と申しまして、株の取引や配当にかかる税金がたった10%、こういう世界でも日本だけという大株主優遇の税制が続いてきた。こういうことで下がってしまっている。
 このグラフを政府に突きつけますと、さすがに政府も「これは結構なグラフです」とは言えないんです。誰が見たって、大金持ちの負担率が下がるというのはおかしいことです。この証券優遇税制はやめなさいといいますと、首相も、「2年後にはよほどの事がない限りなくします」と答弁する。2年後になくすというのだったら、すぐになくすべきです。すぐになくすとはいわないところが問題なのですが、しかし、結構なことだとはいえないわけであります。
 先日、わが党の笠井議員が、日本共産党が提案している富裕税について、首相にどう考えるかを聞きました。私たちが提案している富裕税というのは、どのぐらいの層にかかるかというと、相続税対象額で5億を超える資産に対して課税する。課税対象は、0・1%程度の文字通りの大資産家ということになります。欧米でも富裕税は導入が当たり前の流れとなっています。首相も答弁で否定できずに、「所得再分配の機能を見直すという方向でこれから議論してまいります」といった。「やる」とは言わないですよ。しかし否定はできなかった。ここが大事なところです。富裕層に──「富裕層」と言っても本当の「富裕層」ですが──、応分の負担を求めるということは、当然のことだということが、国会質問でも明らかになってまいりました。
 もう1つ、大企業への課税ですが、私たちが主張しているのは、これ以上の減税はやめるべきだということなのです。政府は、さらにいま5%の法人税減税をやろうとしています。これはやめなさいということです。それと大企業への優遇税制──研究開発減税とか、連結納税制度など、いろいろな優遇減税制度があって、課税のベースが狭くなっている。これを取り払って課税ベースを広げて、ちゃんと税金を普通に払ってもらう。不公正税制をなくしなさいという要求になっております。これ以上法人税率をどんと引き上げろという要求ではないのです。下げるなという要求であり、不公平な優遇をなくせという要求なのです。ですからこれもなかなか否定することは難しいのです。
 私は、先日の予算委員会での質疑で野田首相にこう聞きました。「首相は本会議の答弁で、『法人税減税を行えば、雇用や国内投資の拡大につながる』と答えたが、どうして雇用や国内投資につながるのか、説明してください」。こう聞いたところ、首相はどうしてつながるか答えられないんです。最後に何と言ったかというと、「私は、投資や雇用につなげていくことを期待しております」。「期待」では困るんです。どうしてつながるか聞いたが答えられない。
 パンフレットの40ページの表をご覧ください。これは経産省が行った6000社を対象とする調査結果です。企業が投資先を決める際に重視するものは何かという調査です。表にあるようにトップはダントツ「需要」です。「税金」と答えているのはごくわずかです。
 企業が海外に投資する際に、何よりも「需要」を求めて海外に投資するわけです。どうして国内投資が起こらないかというと、国内の需要が冷え切っているからです。だから投資が起こらないんです。その時に消費税大増税をやったらどうなるか。ただでさえ落ち込んでいる内需をさらに落ち込ませ、国内投資がさらに減ることになります。産業空洞化をすすめ、雇用を減らし、それが一層の内需の落ち込みを招く悪循環の引き金を引くのが、消費税の大増税ではないでしょうか。それと一体に大企業に減税をばらまいたところで、雇用にも投資の拡大にもつながりません。「法人税を下げないと海外に逃げちゃうぞ」とよく巨大企業の社長さんたちはいいますが、これは道理のない脅しだということを、強調したいと思います。
 負担能力という点では、大企業ほど大きな力を持っているところはありません。多くの巨大輸出大企業は、この間、「内需を犠牲にして外需で稼ぐ」というやり方を取ってきました。つまりリストラで労働者を絞り、中小企業を絞って、コストをカットして、外需で稼ぐ。こうやってきました。コスト削減で労働者や中小企業から吸い上げたお金が、260兆円の内部留保に積まれているわけです。それともう1つ、あいつぐ大企業減税で国民のみなさんから吸い上げたお金も積まれているわけです。これ以上、大企業への減税をやっても内部留保に積まれるだけで、けっして生きた産業のためには使われません。私たちが提案している大企業への応分の負担というのは、働く人や中小企業や国民から吸い上げたお金を、元の持ち主に返しなさいというしごく当然なものだということを、強調したいと思います。

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第2段階では国民全体で力に応じて負担─所得税の累進課税の強化

 これが第1段階での財源政策ですが、そのうえで第2段階の「先進水準の社会保障」まですすむ場合には、「提言」では、国民全体で力に応じて負担する、所得税の累進課税の強化という方針を打ち出しております。
 「国民全体で」という言葉を聞きますと、消費税を連想される方もいるかもわかりませんが、私たちは、国民全体で「力に応じて」と書いてあります。ここが大事なところです。将来にわたって「応能負担」の原則を貫く。「応能負担」といいましたら、まずは富裕層と大企業の応分の負担ですが、そのうえで、所得税の累進の強化という方向で税収を見いだしていくというのが私たちの考えです。
 なぜこの方針を出したかといいますと、「先進水準の社会保障」の実現となりますと、やはりそれなりの財源が必要となってきます。1番お金がかかるのは、最低保障年金の確立です。それから医療費の窓口負担ゼロ、介護の利用料もゼロ、ここまでいきますとやっぱりどうしてもお金がかかってまいります。
 大企業の法人税をもっと上げればよいかと、これも検討しましたが、いまの国際的状況の中で日本1国でそれをやりますと、日本が特別に法人税が高くなってしまうという心配もあります。そういう全体のことを考えまして、社会保障の抜本的拡充まですすもうと思ったら、国民全体で支える必要がある。ただその場合も消費税という弱いものいじめの税金は絶対に選択肢にしない。所得税の累進の強化で財源をつくるという選択肢が最も理にかなっている。これが私たちの考えでございます。
 多くの国民のみなさんが、「社会保障は大事だから、やはり国民も一定の負担をしなくてはならないかな」と思っていらっしゃると思います。政府や財界はそこにつけ込んで、消費税増税といってくるのですが、本当に社会保障を将来にかけて良くしていこうと思ったら、たくさんのお金がかかることは、誰が考えても当たり前の話です。私たちは、その場合も消費税ではなくて、税制民主主義にたった所得税の累進強化という道がありますよということをきちんと示すことが、「提言」の全体に説得力を持たせることができると考えた次第であります。
 この第1段階と第2段階の全体の改革を実行しますと、どれだけの財源が出てくるか。
 まず、第1段階での歳入と歳出の改革で出てくるお金が、12兆円から15兆円です。第2段階の所得税の改革で出てくるお金が6兆円程度です。あわせて改革によって出てくるお金が18兆円から21兆円です。
 同時に、私たちの「提言」では、冒頭にのべたように、「国民の所得を増やす民主的経済改革」を同時並行ですすめます。そのことによって、経済が成長の軌道に乗っていきます。そうしますと、いまのべた18兆から21兆円のほかにも、経済成長による自然増収というものが出てきます。この自然増収分というものは、既存の税収からも出てくるんです。既存の所得税とか法人税などからも出てまいります。計算してみますと、さきほどのべたように、年2・4%程度の経済成長がありましたら、ちょうど10年後の2022年ごろまでには既存の税収もいまの2割以上増えてまいります。そこで20兆円程度の自然増収が出てまいります。
 ですから改革分と自然増収分とあわせて40兆円以上の新たな財源が出てくるというのが私たちの見通しであります。40兆円といいましたら大きな額ですが、そのくらいのことは、政治の姿勢を変えればできるのです。この40兆円のだいたい半分を社会保障の充実を中心に、さらに教育研究、中小企業、農林水産業などの暮らしにあてる。そして半分を財政危機打開のためにあてる。こういう大まかなプランで進んでいこうというのが、私たちの「提言」」の考え方であるということを、ご報告させていただきます。

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民主的な国際経済秩序をつくる立場で

 第4に、この「提言」が国際的視野に立ったものだということものべておきたいと思います。すなわち、民主的な国際経済秩序をつくるという立場に立っております。
 たとえば「提言」では、法人税の税率について「法人税の引き下げ競争を見直す国際的働きかけをすすめ、下げすぎた法人税率の適切な引き上げをはかる」と明記しています。つまり国際協調で法人税率を上げていこうということです。この間、世界の先進国といわれる主要各国では、「多国籍企業を呼び込む」という名目で、法人税の引き下げ競争を続けてきました。その結果何が起こったか。日本だけではありません。各国政府の税収が枯渇してしまっています。そして借金も世界各国で増えてしまっています。それが政府の機能を損なってしまっている。「多国籍企業栄えて国滅ぶ」という状況は、世界の先進主要国のあっちこっちで起こっているのです。そういうもとで、OECDなども「これは有害な税の競争だ。やめるべきだ」という警告を、1990年代から出しております。最近は、G20でも法人税の引き下げ競争はやめようではないかという議論が起こっています。日本が主導的に国際的に働きかけて、みんなで一緒に法人税を引き上げようじゃないかというのが「提言」の提案です。国際協調で法人税を上げよう──これは無理のない、そして大義のある方向ではないでしょうか。
 また、「提言」が「為替投機課税」を新設すると提起していることも注目をいただきたいと思います。
 世界で投機マネーということが問題になっています。投機マネーはいったいいくらあるのか。「投機マネー」という統計があるわけではありません。どこまでが投機でどこから先が投機ではないという事は、なかなか判定しづらいことですから。ただこういう数字を一つ紹介したいんです。アメリカの調査会社でマッキンゼー・アンド・カンパニーというのがあります。そこが最近、調査結果を発表しています。世界の金融経済がどう推移しているかの調査結果です。これを見ますと、世界の金融経済は、どんどん膨れあがって、リーマンショックで一時減っていますけど、また膨れあがって、直近の2010年にはリーマンショックの前を超える史上最高の水準まで膨れあがっています。総額212兆ドルです。金融経済というのは、世界の主要79カ国の株式と債券などの残高の合計をとっているわけですが、212兆ドルにも達する。まったくピンとこない数字ですが、世界の名目GDPの3・3倍ものお金があふれていることになります。もちろん一定のお金というのは、実体経済を動かすためにも必要で、これがすべて投機マネーとは言いませんが、専門家の見立てでは220兆ドルのうち100兆ドルぐらいは、実体経済を動かすためには必要のない、余った余分なお金だということです。
 これがまさに投機マネーとして動くわけです。お金っていうのは困ったもので、じっとしていられないんです。増えていかなきゃならない。だから儲け先を探して、この100兆ドルの投機マネーがあっちこっち動くわけです。為替投機に動く。円高の1つの原因になっています。原油市場に入っていく。また原油も上がってますでしょう。穀物市場にも入っていく。世界中の経済をかく乱する投機マネー。これを規制しようではないかというのは、世界的な動きになっていまして、ブラジルでは金融取引税をすでに導入しました。EUでも投機に課税するという方向に動きつつあります。日本でも「為替取引課税」を実施しようではないかということを、今度の「提言」には盛り込みましたが、これも国際協調でやっていこうという重要な中身になっております。
 それからもう1つ提言で注目していただきたいのは、2つ目の柱の「民主的経済改革」のなかで、人間らしく働けるルールをつくる。あるいは中小企業と大企業との公正・公平な取引のルールをつくるなどの提起をしております。これも国際的意味を持つと思います。
 ILOという組織があります。「ディーセント・ワーク」=人間らしい労働のルールづくりを各国に呼びかけています。ILOの最近の報告書を読みましたら、日本が名指しで批判されております。何と言って批判されているかと言いますと「日本では賃金下落が続いている。その結果需要が大きく落ち込んでいる。それが物価下落のスパイラルを作っている」。つまりデフレスパイラルの原因は賃金の下落だということです。大企業の労働者の賃金を引き上げる。中小企業との関係でも公正な取引をやって、中小企業の商売がちゃんと成り立つようにする。中小企業で働く人の賃金も上がるようにする。これをちゃんとやらないとだめだということを、ILOからも言われているのが日本なんです。「提言」で提案しているような、人間らしい労働、人間らしい賃金、中小企業の経営の安定と発展、これらは国際的要請でもあるということを強く訴えたいと思います。
 「提言」では、TPPの問題についても言及しております。この間、TPPに反対する運動がずっと広がりまして、私も、農協のみなさん、漁協のみなさん、医師会のみなさん、自治体関係のみなさんなど、これまでにない広範な方々と共同の運動をやっておりますが、この共同はもっともっと発展させていきたい。これは日本の農業を壊すだけではありません。日本の経済主権を米国にまるごと売り渡す。国の形を変えてしまう亡国の政治です。それぞれの国の経済主権を尊重し、食料主権を尊重・確立していくというのは、あたりまえの世界の流れになりつつあります。これも、世界の未来ある方向に合流していこうという意味で、たいへん大事な意味を持っていると思っています。
 一握りの多国籍企業だけ栄えて、諸国民の暮らしが荒れ果てるという事になってはいけない。いま世界に求められているのは、一握りの多国籍企業には社会的規制をくわえる。そしてアメリカ1人勝ちのような経済覇権主義も押さえていく。そしてすべての国の経済主権を尊重し、すべての国の国民生活が向上するような、民主的な国際経済秩序が必要ではないでしょうか。この「提言」は、そういう国際像も念頭において、作成したということも、報告させていただきたいと思います。

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政治の姿勢を変えれば消費税に頼らない道がある

 私は、先日あるBSテレビに出演しまして、「提言」について話しましたところ、司会者が、「仕組みを根本から変えようというものですね」「ほかの党とは違いますね」というので、「その通りです。仕組みを変えたら、まったく違う道が開かれるのです」ということをそこでもお話しいたしました。
 先日、国会内で経済懇談会をやりましたら、経済の専門家の方がずいぶん見えましたが、「立場が違う方から見ても、これは無理の無い提言だ」という評価もいただいたところで、大変うれしく思っております。
 たしかに、これを実行しようと思ったら、政治の姿勢を根本から変える必要がある。しかし根本から政治の姿勢を変えれば、実行可能な別の選択肢がここにあるということが重要なことではないでしょうか。消費税に頼らなくても、社会保障を良くして、財政危機を打開する道がちゃんとある。そこに大いに確信を持って、消費税大増税ストップの運動をおおいに広げようではないかということを最後に申しあげまして、報告とさせていただきます。ご静聴ありがとうございました。

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