22日閉会した京都府議会2月定例会で、「原子力政策に関する意見書」(自民、民主、公明提案)が全会一致で可決され、「関西電力大飯原子力発電所3号機、4号機の再稼働に反対する意見書」(日本共産党が提案)は日本共産党府議団(前窪義由紀団長、11人)のみの賛成で、否決されました。また、「東日本大震災で発生した災害廃棄物の広域処理に関する決議」(自民、民主、公明提案)が全会一致で可決されました。
 同決議や意見書に対し、日本共産党の馬場紘平議員が行った討論を紹介します。

 我が会派提案の「関西電力大飯原子力発電所3号機、4号機の再稼動に反対する意見書案」についてです。福島第一原発は内部の状況把握すらままならず、政府の「収束」宣言とは裏腹に事故原因の究明も見通しが立っていません。いま必要なことは、徹底した科学的調査による知見を活かし、原発ゼロにむけて政治決断を進めることです。
 ところが政府は、「政治決断」により強引に原発再稼動を進めようとしています。なかでも福井県大飯原発では、近辺に多数の活断層が走っており、それらが連動した場合、ストレステストで関西電力自身が限界と評価した、激しい揺れに見舞われるとの専門家の指摘もあります。また、若狭湾沿岸で発生したとされる過去の大津波についても、関西電力はボーリング調査の結果、痕跡はないと発表しましたが、専門家からは「証明できていない」との指摘もあります。このように、再稼働に必要とされる一つ一つを見ても、その条件はことごとく満たされていません。このような状況での政治判断による原発の再稼働は断じて許されません。
 本議会にも、大飯原発3・4号機の再稼働は、原因究明とそれにもとづいた新たな安全基準を示したうえで慎重にするよう求める陳情も出されています。 このような府民の声にこたえることこそ、本議会に求められています。また、3会派提案の「原子力政策に関する意見書案」については、以上の立場から賛成するものです。

 3会派提案の、「東日本大震災で発生した災害廃棄物の広域処理に関する決議(案)」についてです。
東日本大震災によるぼう大な災害がれきに対し、被災地の首長等から「復興のためにも処理を急いでほしい」と痛切な声があがっています。そのため、政府が総力をあげ、被災地での処理能力の強化等、取り組みをいっそうすすめるとともに、「広域処理」を住民合意ですすめることは必要と考えます。
 被災地のためにできる支援をしたいというのは、国民の多くが共通のものとして持っているでしょう。しかし、国の瓦礫処理対策の遅れが問題であるにも関わらず、廃棄物の受け入れに反対することが非国民かのように扱われ、それを国が先導するかのような今の流れは厳しく批判されるべきです。また、現在の議論の根底には、東京電力、政府が放射性物質への責任ある対応をしてこなかったことへの国民の不信があります。
 「焼却した場合に放射性物質が拡散するのではないか」「廃棄物の焼却場周辺や焼却灰埋め立て処分場周辺は大丈夫か?」など不安・心配の声がこのことを示しています。こうした声に、政府の責任ある対応が求められています。ところが、現在、特別に管理が必要な指定廃棄物は、セシウム134とセシウム137の濃度合計で1キログラムあたり8000ベクレル以上とされており、これ以下は、一般廃棄物と同様の扱われていることは大問題です。この基準自身が、政府の試算でも廃棄物の処理に携わる作業者に年間1ミリシーベルト近い被ばくを容認するもので、この基準のままで、広域処理の名で、国が地方自治体に処理をゆだねることは絶対に認められません。廃棄物の基準および放射線防護対策を抜本的に見直し、強化することが必要です。
 同時に、「広域処理」をする場合、受け入れるのは、自治体で焼却されている「通常の廃棄物」と同程度の放射能の量・質レベル程度以下のものに限ること、処理の各段階で、放射能測定の体制に万全を期すこと、そのための体制、財源、結果の公表については国の責任で行うこと、処理の各段階での測定結果についてはすべて公開すること、が不可欠です。さらに住民合意を前提とすることは当然で、国や関西広域連合、京都府が、焼却施設をもつ市町村に、広域処理を押し付けることがあってはなりません。さらに、受け入れ自治体への財政措置を含む全面的支援策をとることが不可欠です。
 加えて、今なお通常の何十倍もの放射線の中で生活し、「結婚できない」「子どもは産めない」こんな言葉が子どもたちの口から出てくる異常な状況をしっかりと認識し、歴代政府をはじめこのような危険を全国に広めた人たちの反省の上に立ち、東日本大震災と原発事故という未曽有の被災からの復興をすすめるために、政府が本腰を入れて取り組むことを強く求めるものです。

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日本共産党が3月22日の府議会に提出した「関西電力大飯原子力発電所3号機、4号機の再稼働に反対する意見書案」=否決

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から1年が経過したが、被災地の現状はいまだきわめて深刻である。さらに原発事故の被害は今も拡大し、避難を余儀なくされる人は増え続けている。
 ところが、野田内閣は、原発事故の収束宣言を行い、福島原発事故の原因究明はおろか、原発内部がどうなっているかさえわからないにもかかわらず、暫定的な安全基準さえも策定せず、「政治判断」により、原発の再稼働を強引に進めようとしている。
 とりわけ、京都府に隣接する福井県の大飯原発3号機、4号機の再稼働について、政府は原子力安全委員会の安全評価(ストレステスト)一次評価結果の実質審査が終えたとして、3月中にも、首相を含む関係閣僚によって再稼働の判断を決定し、地元同意を求めるとしている。
 しかし、マスコミも「一連の手続きをもって安全性が証明されたとは言えまい」と報道し、安全委員会の班目委員長も「安全確認が終わったことにはならない」と認めている。また、大飯原発は、その近辺に多数の活断層が走っており、とくに陸上の「熊川断層」と海底の「FO─A断層」「FO─B断層」が連動した場合、ストレステストで関電自身が限界と評価した強さの揺れに見舞われるという指摘がある。
 今、求められていることは、「大飯原発の3・4号機の再稼働ありき」ではなく、福島原発事故からの知見を生かし、徹底的な安全調査と対策である。危険な大飯原発3・4号機の再稼働は、京都府民の安全を守るためにも、絶対に認められない。
 よって国におかれては、関西電力大飯原発3・4号機の再稼働を認めないことを求めるものである。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

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府議会で3月22日に可決された「原子力政策に関する意見書」

 東京電力福島第1原子力発電所事故は、住民の被ばくや農林水産物の汚染を招き、周辺環境にも甚大な被害を与えるとともに、原子力発電所の安全性に対する国民の不安を引き起こし、更には、国が推進してきた原子力政策に対する信頼を、大きく損ねる結果となった。
 福井県に隣接する本府においても、関西電力高浜発電所及び大飯発電所については、現在、国において検討されている緊急時防護措置を準備する区域(UPZ)の30キロメートル圏内に、約13万人の府民が居住しているなど、府民の安心・安全を確保する立場から、その安全対策に万全を期すべく、取組を進めているところである。
 このような中、去る2月、経済産業省原子力安全・保安院は、再稼働に向け関西電力が実施した大飯発電所3号機及び4号機のストレステスト(耐性検査)一次評価結果を「妥当」と判断し、その審査結果を原子力安全委員会に報告したところである。
 しかしながら、ストレステストは机上の調査にすぎず、再稼働の判断材料とするには、あまりにも不十分である。再稼働に当たっては、地震や津波、高経年化の影響など福島第1原子力発電所事故の原因究明から得られる知見をもとに、国が新たな安全基準を設定し、これに基づき、プラントの安全性を厳格に調査・確認するという手続が必要である。
 ついては、国におかれては、大飯発電所3号機及び4号機をはじめ、今後検討が進められている原子力発電所再稼働に当たっては、上記手続が適切に行われた上で、原子力政策を担う国の責任において、慎重に判断がなされることを強く要望する。
 あわせて、現下の厳しい経済情勢を踏まえ、国の責任において電力事業者等を指導し、再生可能エネルギーや化石エネルギー等、エネルギー源の多様化を図る中で、安易な電気料金の値上げにより国民や企業に負担を求めるのではなく、経営努力等により、低廉で安定的な電力供給が行われるよう、強い指導力を発揮されることを求めるものである。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

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府議会で3月22日に可決された「東日本大震災で発生した災害廃棄物の広域処理に関する決議」

 東日本大震災発生から1年が経過した現在においても、被災地では、未だ多くの災害廃棄物がうずたかく積み上げられたままとなっており、被災地の早期復旧・復興の大きな障害となっている。
 このため、国から全国の地方公共団体に対し、岩手県及び宮城県で発生した災害廃棄物について、広域処理の協力要請が行われている。また、宮城県議会議長からも、本府議会をはじめ各都道府県議会に対し、協力依頼がなされているところである。
 もとより、被災された方々の一刻も早い生活の再建と被災地の復興は、すべての国民の願いであり、東日本大震災から我が国が再生するためにも、広域処理は、国と地方が支え合って取り組んでいかなければならない大きな課題である。
 しかしながら、一方では、災害廃棄物に対し、東京電力福島第1原子力発電所事故の影響により、その安全性に国民が不安を抱いていることも事実である。これは、発電所事故に当たり、SPEEDIの情報や原子炉のメルトダウンの情報が的確に提供されなかったことなどが、その原因の一つとも言える。
 このため、広域処理を進めるに当たっては、国の責任において、科学的知見に基づく放射性物質の濃度基準についてのわかりやすく丁寧な説明とともに、処理に関する安全基準や取扱指針等の策定、処理段階ごとの断続的なモニタリングの実施など、安全確保のための取組が的確に行われることにより、国民の不安を払拭(しょく)することが必要である。更には、災害廃棄物の受入れによる風評被害の防止策や必要な財政措置など、的確な対策を十分に講じ、処理施設を有する市町村等が安心して取り組める環境を整えることが求められる。
 ついては、被災地の一日も早い復興を支援するため、これらのことが、国の責任において的確に行われるよう、国に対し積極的に働きかけるとともに、本府においても、処理施設を有する市町村等と十分に連携の上、安心・安全がしっかりと確保される中で、府民の理解と協力のもと、広域処理の取組が進められるよう、強く求める。

 以上、決議する。

 平成24年3月22日

京都府議会