フキノトウ 5日は啓蟄。野の虫たちもボチボチ動きはじめます。一方、野の草花も厳冬に耐えて落ち葉をかき分けて芽吹き、小さな花を咲かせます。今年は厳しく寒くて長い冬でしたが、フクジュソウやセツブンソウ、ミスミソウなども可憐な花を咲かせる中、蕗のとうがニョッキリと頭をもたげはじめました。
 写真は伏見区の民家の裏庭一面に頭をもたげた蕗のとうです。蕗(フキ:苳・款冬・菜蕗とも記す:キク科フキ属の多年草:学名=Petasites japonicus:蕗の根茎から生え出る花茎で雌雄異株で写真は雌株)は、日本が原産で北海道から沖縄までの全域に見られます。水がある河川の中州や林の際などに地下茎をのばしてどんどん繁殖していきます。
 蕗のとう(花茎)は蕾の状態で採取され、天ぷらや煮物、汁にいれられます。ほろ苦さが好まれるようで、消化と食欲を増進させます。約15~30センチほどの大きな葉っぱの葉茎は、重曹や木の灰などをいれた熱湯でアクを抜いて、煮たり塩漬けや砂糖漬けなど(伽藍蕗:きゃらぶきが有名)にして食べられ、大きな葉っぱも食用になります。花茎はやがて白い花を咲かせ(雄は黄白色)、その後に地下茎の先から60センチほどの葉茎が出てきます。(仲野良典)
「うららかな春は きびしい冬のあとから来る 可愛い蕗のとうは 霜の下で用意された」(宮本
百合子)
「三月の午後 雪解けの土手っ原で 子供らが蕗のとうを摘んでいる…以下略」(長沢佑「蕗のとうを摘む子ども達」:「日本プロレタリア文学全集」新日本出版刊より)