市が進める京都会館大ホールの建て替え計画は、到底納得できません。なぜ、改修ではなく、近代を代表をする名建築を壊して建て替える必要があるのでしょうか。
 私は、建物の保存を願う人たちと一緒に、市長選挙の両候補者に、公開質問状を出しました。現市長からの回答は、「建て替えは必要不可欠」というだけで、まともな説明さえありませんでした。
 京都会館は1960年、戦後の復興期に、市民の募金を集めて建てられました。荒廃した時代だからこそ、心を癒す文化を普及しよう、文化の殿堂をつくろうという市民の志が込められています。設計者・前川國男は、建物の特徴である、開放感あふれる中庭、伸びやかな庇に、戦後民主主義の息吹を吹き込んだと思います。
 建物は、その時代と地域住民のアイデンティティーです。ヨーロッパでは、保存と改修を重ねながら、建物を大事に使っています。
 京都会館は、必要な改修を行えば、十分使用に耐えうる建物です。市長の回答には、建物に対する愛情は感じられませんでした。
 ただ建物を壊すというだけの市長に、建築や文化に対する見識があるのでしょうか。京都会館を失うことは、戦後民主主義のシンボルを失うことと同じだということをなぜ市長は理解しないのか、残念でなりません。(「週刊しんぶん京都民報」2012年2月5日付掲載)