2012年はオリンピックイヤー(7月、ロンドン)。女子水球日本代表、愛称・ポセイドンジャパンは今月、オリンピック初出場をかけて千葉県習志野市で開かれるアジア予選(24日~)に挑みます。代表メンバーで「水球王国」京都にゆかりのある、竹重茉里(27)、中田萌(20)の両選手にオリンピック挑戦への意気込み、水球の魅力について聞きました。

力強く水の中を支配する

 「水上の格闘技」とも呼ばれる水球(WaterPolo)。女子水球は00年のシドニー五輪から正式種目になりました。出場できるのは8カ国で、アジアの出場枠は1。五輪挑戦3回目となる日本は、初のアジア頂点、ロンドン五輪出場を目指し練習に取り組んでいます。チーム愛称の「ポセイドン」は、ギリシャ神話の海を司る神で、“力強く水の中を支配する”という決意を込めています。
 竹重茉里(たけしげ・まり)選手はチーム最年長のベテラン。大学2年時にアテネに挑みましたが、アジア予選2位で敗退。以降、出産などもあり一時は水球から離れていましたが、再度五輪に挑みます。「目標である五輪出場をつかみたい。今回が最後のつもりで頑張ります」と決意をみなぎらせます。
 昨年5月のワールドリーグで初めて代表招集され、今回五輪初挑戦の中田萌(なかた・もえ)選手は水球選手としては小柄(160センチ)ながらも、「自分の持ち味の泳力を生かして活躍したい。なでしこジャパンのように注目を集めたい」と目を輝かせます。

「水球王国」から代表4人

 鴨沂や乙訓、鳥羽など水球部の強豪校があり、かつて国体5連覇(男子)の記録を持つ京都は「水球王国」として知られます。竹重、中田両選手以外にも、現在海外リーグでプレーする小中美沙(23)=京都踏水会出身=、安本智恵(23)=鴨沂高校出身=も京都出身です。
 京都市南区生まれの竹重選手は、小学5年の時、京都踏水会で水球に出会いました。「京都は小学校から水球ができる環境があるのが強み。ジュニア時代からやっていると基礎がしっかり身に付きます」と語ります。
 三重県出身の中田選手は、元々長距離の競泳選手で、「タイムが上がる」とのアドバイスで始めた水球にはまり、鴨沂高校に進みました。

「退水」とるキレのある動き

 海外チームと比べてパワーや体格で劣る日本の攻撃で欠かせないのが、相手選手のファウルを誘い「退水」(20秒間の退場)を取ることで、ゴール前で数的有利をつくる戦略です。その要となるのが、ゴール正面に陣取るフローターの竹重選手。「沈められたり、もみくちゃにされるポジションですが、キレのある動きで相手を翻弄したい」と話します。
 ゴール前でのパス回しやカウンター攻撃の起点となる右ドライバーの中田選手。競泳で培った持ち味の高い泳力と代表メンバーも驚くスタミナで、「細かく動いて海外チームを引っかき回したい」と意気込みます。
 鴨沂高校水球部顧問で、日本代表ヘッドコーチの藤原秀規さん(42)は、「相手の裏をつく素早い動きで退水を取れる竹重、スピード・持久力に優れた中田、それぞれ日本の攻撃に欠かせない選手。持ち味である機動力とチームワークで勝負したい」とアジア予選を見据えます。
 国内ではまだまだメジャースポーツとは言えない水球ですが、「スピーディーな展開、派手なシュートシーンは迫力満点ですよ」(中田)、「ゴール前での選手同士のやり合いも見もの。女子でも水着が破れることがあります」(竹重)とそれぞれ魅力を語ります。今回のアジア予選は国内での開催。「ぜひ会場で私たちの全力プレーを見て欲しい。初の五輪出場をかけて頑張るので、応援よろしくお願いします」(「週刊しんぶん京都民報」2012年1月1日付掲載)

水球とは? 1チーム7人でプレー。ポジションは、ゴールキーパー、フローター、フローターバック、ドライバーの4種類。25×20メートル、水深2メートル以上のプールで、8分間4ピリオドの合計得点を争います。キーパー以外は両手でボールを触れません。過度なファウルは20秒間の退場(退水)となります。
 国内チームは男女とも、大学クラブや各地のクラブチームが中心で、男子は日本選手権、女子は全国女子水球競技大会で日本一を決めます。
 オリンピックでは、男子は3大会連続金メダルのハンガリーやイタリア、女子では、オーストラリア、アメリカが強豪国です。