日本共産党府議団(前窪義由紀団長、11人)は20日、談話「12月定例議会を終えて」を発表しました。
 談話の全文は以下の通り。


 12月1日から開かれていた12月定例議会が16日に閉会した。
 今議会は、TPPへの協議参加や消費税増税の動きをはじめ、民主党政権の暴走と「二大政党づくり」の破綻を前に、国民的な批判や闘いが広がる中で開かれた。
 我が党議員団は、脱原発・再生可能エネルギーの飛躍的普及のため、また深刻となる府民生活の実態を踏まえ、また広がる運動と手を携えて、行き詰まる政治の転換と「福祉の増進」を進める自治体本来の役割発揮を求め、積極的に論戦した。
 1、本府議会には、9月議会提案の決算認定議案5件を含め計21議案が提案された。
我が党議員団は、9月議会提案の第16号議案「平成22年度一般会計及び特別会計歳入歳出決算を認定の件」及び第18号議案「平成22年度京都府水道事業会計決算を認定の件」の2件に反対し、他の議案には賛成した。
 一般会計補正予算案など19件については賛成したが、①年末年始を控え、国の自主避難した被災者への支援が極めて不十分なもとで、本府として故郷に帰省するためのシャトルバスや年末見舞金、特別な相談体制など支援策をとること、②高校生・大学生の就職が深刻であり、就職説明会の開催や経済界への求人の要請など積極的に取り組み、全員が就職できるよう全力を尽くすとともに、今回積み立てる緊急雇用基金34億円の執行に当たっては、最大限正規雇用につながる具体化を求めるものである。
 2、第16号議案「平成22年度一般会計及び特別会計歳入歳出決算を認定の件」は反対した。その理由は第一に、商工会議所、商工会への補助金を4千万円も削減し、5年間で3億5千万円にものぼる削減や、地元京都の中小企業が苦境に陥っているときに、府立学校の地デジテレビを、東京の大企業にすべて発注し、さらに東山の知恩院の山門、境内全域の防火防犯設備工事が大企業に指名されるなど、内需を温める中小企業支援策となっていないことである。
 第二に、雇用を守る取り組みで、違法な派遣切りを行い、労働局の指導にも従わなかったジヤトコやトステムの工場閉鎖問題で、雇用と地域経済を守る立地企業の社会的責任を果たさせる点で極めて不十分な対応となっているなど、厳しい雇用情勢のもとで、雇用政策の足場が弱いことである。
 第三に、国保料の値上げにつながる国保の都道府県単位の一元化方針の具体化や、国保料が高すぎて払えないという悲鳴が広がっているなかで、7億円あった市町村国保への補助金復活への願いに応えず、さらに子どもの医療費助成の拡充や私学助成の府外生徒への適用を先送りしていることなど、社会保障の充実の願いに背いているからである。
 第四に、大飯原発3・4号機の再稼働やもんじゅ再開に反対の意思表明をせず、東京電力福島第一原発の重大事故による放射能被害が拡大し、原発の安全神話が崩壊するとともに、福井原発群の危険性が明らかになり、「原発をなくしてほしい」という府民の願いが大きく広がっているにもかかわらず、脱原発の願いにまったく応えていないことである。
 第五に、府政の運営についても、社会保障をはじめ国の責任を放棄し、構造改革の路線をいっそう進める地域主権改革の推進や、関西広域連合の発足、京都地方税機構の推進など、自治体本来の役割をゆがめていることである。さらに、同和奨学金返還対策事業の継続、水道水の必要量が既に確保されているにもかかわらず畑川ダムの建設を強行し、無駄な天ケ瀬ダム再開発や京都市内高速道路、巨大貯留施設「呑龍」等の見直しも行わないなど、メスをいれるべき課題に背をむけていることである。
 第18号議案「平成22年度京都府水道事業会計決算を認定の件」は過大な水需要予測による過大な設備投資の結果、市町にムダな「カラ水」を押し付け、府民には高過ぎる水道料金を押し付けることになっており反対した。
 3、府民の運動と我が党議員団の論戦により、国政の重要問題に対する知事の政治姿勢が浮き彫りとなった。また府民要求について一部前進をかちとるとともに、知事が追い詰められている姿も浮き彫りとなった。
 国政の重要な問題であるTPPについて、参加すれば「農業振興や中小企業振興とは両立しない」と参加反対の態度をとるよう厳しく求めたが、「情報の開示が必要」「対策なき議論はおかしい」と従来の答弁を繰り返す一方「地域の競争力をつけていく」と述べる等、まともに京都の農業や中小企業等を守る立場にないことをさらけだした。また、福井県の大飯原発3号機、4号機の再稼働反対や高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉についても、まともに答えなかった。関西電力に「立地県並みの協定」を求めているにもかかわらず、府民の原発に対する不安にまともに応えないことは重大である。
 一方、我が党議員団が求めた原子力防災にかかる専門職員の採用について募集を開始したことは重要である。
 京都の中小企業を直接支援し内需を温める施策として中小企業振興基本条例や公契約条例の制定、固定費補助の拡充と住宅リフォーム助成制度の創設等を求めることと結び、府内業者の実態をふまえた入札制度の改善を求めてきた。こうした中、12月15日より最低制限価格を引き上げや「地域貢献優先型総合評価入札」の試行、物品調達の地元企業発注方式の一部実施等を含む入札制度の改善が実施されることとなった。
 一方、知事は「私契約も公契約も同じ」と公契約条例実現の願いに背を向けた。
 また、住宅リフォーム助成制度について県として実施した秋田県や佐賀県の例をあげ「経済対策として京都府がイニシアチブを発揮することで、市町村施策がさらに広がる」こと、さらに耐震改修や太陽光パネル発電設置の際の改修、住宅の長寿命化などの政策課題に加え、「地域循環型の経済システムをつくる行政発モデル、さらに減り続ける地元建設業者と後継者の育成にもつながる政策課題」があることを提案し実現を求めた。知事は「経済対策も政策課題も必要」とのべたものの、「ムダなリフォームをしてはいけない。ムダな公共事業と同じ」と答弁した。これは、すでに実施した自治体の成果から目をそらす態度であるとともに、論戦と京都住宅助成制度創設推進協議会の設立など運動の大きな広がりのもと、道理ある要求にまともに反論できず、追い詰められていることを示すものである。
 日本写真印刷株式会社のリストラ問題で、知事は「再就職支援に取り組む」と述べるにとどまったため、集約先の三重県津工場で、県および市から計8億円の補助金を受け取っている事実も示し、
 リストラ計画の撤回等を厳しく求めるとともに、補助金の返還や企業誘致条例の改正を求めた。
 4、医療や社会保障の在り方についても論議となった議会であった。
 福祉医療制度検討会の第一次提言が発表され、来年度にも訪問看護療養費を福祉医療制度の対象とするとともに、焦点になっていた子どもの医療費助成制度が、通院も小学校卒業まで拡充されることが示された。しかし、その内容は月3000円を超えた分の償還払い制度であり、現在、府制度と同等にとどまっている自治体が京都市のみとなり、小学校卒業まで無料にするためにも、京都市長選挙は重要となっている。
 知事が「働く場所がなくなってもすぐに仕事に就けるよう、トランポリン型福祉を導入する」とのべて設立された「生活・就労一体型支援政策研究会」が11月に報告書を発表した。そこでは「稼動年齢層を中心に3年間で5000人を目標」と自立目標が掲げられ、また政府に対する「平成24年度政府予算に関する重点要望書」には「期間を設定した集中的かつ強力な就労支援・就労指導ができる仕組みを構築すること」と提案しているが、我が党議員団は、現在検討されている生活保護の改悪の柱である有期制の導入につながりかねないものとして批判した。
 舞鶴市長選挙の結果をうけて見直した「中丹地域医療再生計画」について、(1)市民病院を療養型病床に特化し、救急医療・住民健診・リハビリや過疎地域の支援等これまでの役割をなくし、さらに現行の中丹医療圏でもベッド数が足りないのに、さらに200床減らす計画となっていること、(2)京都府が課題と指摘してきた周産期サブセンターの再構築や整形外科医不足対策などの解決策がないこと、(3)府立舞鶴子ども療育センターの病床を60床から30床に半減する計画が突然提案されたこと、を指摘し自治体が医療に果たす責任放棄であると厳しく指摘した。
 5、教育の在り方が問われる議会ともなった。
 今春開校した府立宇治支援学校では、定数内講師が、城陽支援学校や南山城支援学校の0名、八幡支援学校の3名、向日が丘支援学校の5名に対し極端に多い42名となっている。また新規採用教員も他校では1校につき3名程度に対し12名にも達し、さらに肢体不自由児の機能訓練については、向日が丘支援学校では21名の生徒に5名の専門教職員に対し40名に対し2名配置にとどまっている。こうした事態に、保護者から再三にわたり教職員体制の強化を求める要望書が提出されたにもかかわらずまともな対応がされてこなかった府教育委員会の責任は極めて重大である。府立盲学校でも同様の事態が起こっている。
 我が党議員団は、本会議や常任委員会で改善を厳しく求めるとともに、議会閉会後も府教育委員会に申し入れをするなど、引き続き保護者の皆さんとともに教職員体制の強化等求めるものである。
また「京都市・乙訓地域公立高等学校教育制度に係る懇談会」が設置され、制度改革を来年度夏頃までに一定の方向が出されようとしている。これは山城通学圏においてすでに類・類系制が廃止され「普通科」一括募集となり、来年度からは口丹以北の通学圏でもⅠ類・Ⅱ類の区分をなくし「普通科」として募集する中での検討で、しかも山城通学圏でも端的に表れている格差と序列の教育の総括ないままに通学圏の見直しや選抜制度の改変を行うことは、京都市・乙訓通学圏に新たな学校間と個人の競争と管理の教育を進めることになると指摘し、学校の序列化や格差が起こらないように保護者、子どもも含めた真摯な議論を求めた。今後の運動と論戦がこの分野でも急がれる。
 6、関西広域連合や地域主権改革について、他会派からも意見が出される議会となった。我が党議員団は、本会議で「KANSAI統合型リゾート研究会でカジノを含む検討は中止し研究会の解散を」と求めた。その後開かれた関西広域連合特別委員会では、与党会派から「カジノの検討は中止を」と強く求める意見が出されるなど、地域主権改革が推進される中で、矛盾も広がっていることを示した。今後、そもそも地方自治とは何か・自治体の在り方を厳しく問いただしていくことがいよいよ求められる段階に入っている。
 7、「消費税増税に反対することに関する請願」が52にも上る団体から提出された。また、子どもと教育・文化を守る京都府民会議などから43,396筆にものぼる署名を添えて請願が提出され、我が党議員団は議会開会中の12月6日、府議会で行われた提出行動に全員出席して懇談・激励した。
 我が党議員団は、意見書案と決議案17件について、自民・民主・公明三会派提案の「災害に強い日本の構築に向けた社会資本整備を求める意見書案」は「高速道路のミッシングリンク解消」(第二名神の建設促進)を求めており反対し、他の意見書案・決議案16件には賛成した。
 「障害者総合福祉法(仮称)の早期制定を求める意見書案」は、障害者団体が連名で京都府議会での意見書採択を求めておられたものである。これは障害者自立支援法廃止後の新しい法律を、昨年の基本合意文書にもとづき成立を求めるものである。ところが自民・公明がこれに反対し不採択とされたことは重大である。
 いよいよ京都市長選挙まであとわずかとなった。国の行き詰まった政治を持ち込むオール与党市政の継続か、市民生活第一、脱原発の新しい市政かが問われる全国注視の選挙となる。我が党議員団は、年末を控え、厳しい府民の暮らしを支える自治体の役割発揮を求めるとともに、市政刷新を願うすべての皆さんとともに、勝利にむけ全力をあげるものである。