イナカギク 晩秋の府立植物園の植物生態園で、イナカギク(田舎菊:キク科シオン属)が白い花を咲かせています。イナカギクは里山の日当たりの良い草地に白い花を咲さかせる野菊の1つで、ヤマシロギクとも言われています。キク科ヨメナ属のシロヨメナと葉っぱも花もよく似ていますが、イナカギクは花びらが少し大きいのと葉っぱが茎に少し抱いている感じがします。
 キク科に属しているキクの中でも観賞用に改良された菊は人目を引きますが、ヒメジョオンのように野草の小さなキク科の花は、雑草のように見られて刈り取られたり、見過ごされてしまうようです。しかし、ちょっと気を配って目をやってみると、茎先で枝分かれして散房状に可愛い小さな花を付けています。
 晩秋の植物園は温室内や鉢植え以外の自然園の花はほとんどなくなります。しかし、植物生態園には背丈50センチほどのイナカギクがあちこちに写真のような小さな素朴な花を咲かせています。そんな生態園にも時折、訪れる人もあります。「華やかな花もいいけど、こんな素朴な花もいいですね。なんだかこころが故郷に帰ったみたいにやすらぎますね」と年輩の女性が花を愛でながら心境を吐露します。このイナカギクはあと1週間ぐらいが見頃です。そして府立植物園の晩秋は、絢爛な楓や紅葉とともに、黄金に輝く銀杏が一面にひろがります。(仲野良典)