失業しており、仕事を探しています。ハローワークに通っていますが、なかなか仕事が見つかりません。求人票には書いていませんが、年齢制限が暗黙にあり、「あなたの年齢では仕事はほとんどありませんよ」と言われるほどです。年齢で差別するのはおかしくないですか?(45歳、男性、京都市)

年齢差別した企業の責任追及が可能

(64)年齢差別おかしいイラスト・辻井タカヒロ

 年齢による雇用上の差別については、雇用対策法改正によって2007年10月から、年齢制限の禁止が事業主の義務となりました。それ以前は、事業主は労働者の募集・採用で年齢制限を緩和する努力義務を課されていただけでした。改正された同法第10条は、事業主が、募集・採用について年齢にかかわりなく均等な機会を与えることを法的な義務とし、年齢制限を明確に禁止したのです。
 日本の雇用社会では、長く年齢別の人事管理が行われてきました。新学卒者を対象とした採用、年齢による昇給・昇進から定年まで、年齢別処遇や慣行が一般的です。そのために、一定年齢を上回る者、とくに中高年齢者がいったん職を失うと、その再就職がきわめて困難になる深刻な状況があります。それを改めるのが同法改正の狙いでした。
 たしかに、この法改正の結果、「嘱託職員。35歳まで」といった、年齢を条件とする募集はできなくなりました。ただ、同改正による年齢差別禁止は中途半端なものです。とくに、同法施行規則では、合理的理由があれば年齢制限が認められる場合として、多くの例外を予定しているからです。
 それでも、同法違反があれば、労働者から職安所長に対して情報提供をすることができます。職安所長は、それに基づいて調査をしたうえで、職業紹介事業者への勧告を行うことになっています。勧告という緩やかな措置ですが、活用することができる手続きです。
 通常、採用段階で会社側が年齢差別をしたということを労働者側が証明することは簡単ではなく、また、差別した事業主に対する特別な法的制裁が定められていないなど問題は少なくありません。しかし、悪質企業など個別の事案によっては、労働行政当局への問題提起と平行して、労働者が民事裁判で争って年齢差別を明らかにすることができれば、不法行為として損害賠償請求も可能となります。とくに、行政や立法の課題につながるような問題提起、できれば集団的な問題提起が効果的だと思います。(「週刊しんぶん京都民報」2010年6月27日付)

わきた・しげる 1948年生まれ。龍谷大学教授。専門分野は労働法・社会保障法。