“大地震と若狭湾原発群事故の同時進行でも複合災害のリスクはかなり少ない”、“琵琶湖の放射性物質は大量の湖水で薄まる”―こんな見解を、京都市防災対策総点検委員会が「中間報告」でまとめていることが分かり、市民、専門家から「原発事故への認識を疑う」と批判の声があがっています。

科学的なデータ公表を

京都府保険医協会理事・医師 飯田哲夫さん

 放射性物質による健康被害について、被ばく量が少ないから安全ということは証明されていません。
 福島原発事故では、東京に及ぶほどの広範囲で放射性物質が飛散し、どのような被害が起っているのか解明されていない中、「琵琶湖は水量が多いから希釈される」「EPZは20キロでよい」と言われても、誰もが疑問に思うのではないでしょうか。
 京都市が原発事故を想定した防災計画を作ること自体は評価できることだと思います。しかし防災計画をつくるのであれば、過酷事故が起こってどれくらいの放射性物質が排出され、京都市がどの程度汚染されるのか科学的なデータを公表してもらいたい。
 原発事故が起こり、大量の放射性物質が排出されれば、その地域に人が住むことはできなくなります。そういう点では防災計画は成り立たないかもしれませんが、そういった最悪のケースも含め試算すべきだと思います。

「中間報告」
 同総点検委員会は、東日本大震災・福島第1原発事故を受けて市防災計画を見直すため、行政関係者や学識経験者28人が参加して6月22日と8月29日の2回開催。第2回委員会で「中間報告」をまとめ、市に提出しました。
 中間報告は、「原子力発電所事故等に関する対応」について、「今後、京都市域で大規模地震が発生し、同時に若狭地域の原子力発電所で事故が起こって、福島第一原子力発電所で起こったような複合災害が起こるリスクはかなり少ないというのが、原子力の専門家の見方である」「琵琶湖の水の放射性物質による汚染に関しては、仮に琵琶湖方面へ放射性物質が飛散したとしても、琵琶湖の水量が非常に多いため、水中で希釈される」などとしています。(詳しくは「週刊しんぶん京都民報」2011年9月11日付)