“大地震と若狭湾原発群事故の同時進行でも複合災害のリスクはかなり少ない”、“琵琶湖の放射性物質は大量の湖水で薄まる”―こんな見解を、京都市防災対策総点検委員会が「中間報告」でまとめていることが分かり、市民、専門家から「原発事故への認識を疑う」と批判の声があがっています。

メモ程度の報告書

立命館大学名誉教授( 放射線防護学) 安斎育郎さん

 「中間報告」の原発事故に関する記述を見て驚きました。京都市が取るべき対応としては、環境放射線を測定するモニタリングポストの設置や国・府・滋賀県と連携した情報交換などが書かれているだけです。これでは、未整理のメモ程度のものでしかありません。
 京都市は福井原発から、福島市は福島第1原発から、それぞれ約60キロ離れています。福島第1原発の事故後、福島市では、1年間に200枚以上の胸部レントゲン撮影をするのに匹敵するほどの放射線量が、検出されています。
 京都市が、市民の命を守る立場に立つのなら、専門家や行政マンも含めた調査団を福島市に派遣して、被害の実情、行政の役割などを把握すべきです。
 その上で、必要な対策の検討が求められています。「中間報告」からは、福島市の現状から市の対策を練り上げようという真剣な姿勢は全く見られません。
 京都市は世界遺産を数多く抱える、国際観光都市です。この「中間報告」の内容では、海外の人々への説得力を持たないでしょう。

「中間報告」
 同総点検委員会は、東日本大震災・福島第1原発事故を受けて市防災計画を見直すため、行政関係者や学識経験者28人が参加して6月22日と8月29日の2回開催。第2回委員会で「中間報告」をまとめ、市に提出しました。
 中間報告は、「原子力発電所事故等に関する対応」について、「今後、京都市域で大規模地震が発生し、同時に若狭地域の原子力発電所で事故が起こって、福島第一原子力発電所で起こったような複合災害が起こるリスクはかなり少ないというのが、原子力の専門家の見方である」「琵琶湖の水の放射性物質による汚染に関しては、仮に琵琶湖方面へ放射性物質が飛散したとしても、琵琶湖の水量が非常に多いため、水中で希釈される」などとしています。(詳しくは「週刊しんぶん京都民報」2011年9月11日付)