勤めている会社は午前8時始業、午後4時55分終了が定時となっていますが、晩9時まで、4時間の残業がよくあります。最近は、社員のほとんどが9時まで、時には10 時、11時まで残業して、夜勤といって、昼夜を入れ替えて勤務している場合もあります。残業代さえ、会社が払えば何も問題はないのでしょうか。会社が何か時間を定めていれば、違法でもないのでしょうか。(38歳、男性、京田辺市)

労基法36条に基づく三六協定が絶対必要

(3)残業が当り前になってますが…イラスト・辻井タカヒロ

 労働基準法(以下、労基法と略称)では、「実際に就労した時間」で労働時間を算定します。午前8時から午後4時55分で8時間55分ですが、ここから「休憩時間」を差し引いたものが「労働時間」です。休憩時間が分かりませんが、労働時間が6時間を超えるときは45分、8時間を超えるときは1時間が最低基準です(労基法34条)。
 休憩時間が1時間ならば、7時間55分ですので、週40時間、1日8時間の法定最長時間(労基法32条)以内です。しかし、休憩時間が45分であれば8時間10分となり、法違反となります。
 遅くまでの残業があるとのことですが、「残業代」支払いとは関係なく、労基法36条に基づく「三六協定(さぶろくきょうてい)」が絶対に必要です。三六協定なしに1日8時間または1週40時間を超えて働かせれば、労基法違反となります。
 この三六協定とは、使用者(会社)が、事業場の労働者の過半数を代表する者と結ぶ「時間外労働協定」のことです。この協定の範囲で「時間外労働」(1日8時間または1週40時間)をさせる場合に限って労基法違反となりません。三六協定は締結するだけでなく、労働基準監督署に届け出なければなりません。
 会社が三六協定を結んでいるのか、その手続と内容も確かめて下さい。過半数代表は民主的選挙で選ばれなければなりません。また、職場に労働者の過半数を代表する労働組合があれば、会社はその組合と三六協定を結ぶ必要があります。
 なお、「残業代」は1日8時間、1週40時間を超えるとき、「算定対象となる賃金」の25%以上の割増賃金の支払いが必要です(算定対象の賃金の範囲については監督署に尋ねてください)。また、残業とは別に、夜10時から朝5時までは「深夜労働」となりますので25%以上割増の深夜手当が必要です。
 つまり、午後10時以降に残業する場合は、時間外手当の25%以上と、深夜手当の25%以上を合わせて、50%以上の割増が必要になります。夜勤の場合も午後10時以降であれば、それが残業でなくても25%以上の深夜手当が必要です(労基法37条)。(「週刊しんぶん京都民報」2008年3月16日付)

わきた・しげる 1948年生まれ。龍谷大学教授。専門分野は労働法・社会保障法。