サギソウ 真っ白な翼を大きく広げて飛翔するシラサギ(白鷺)そっくりのサギソウの美しい花が今真っ盛りです。
 写真は市内民家の庭先で長年鉢植えして栽培され開花したサギソウです。花言葉は「夢でもあなたを思う」。山下景子著『花の日本語』は「崩すことは簡単。でも一度失われたものは、二度と元には戻らないのです。かつて日本には、朱鷺(トキ)や鸛(コウノトリ)が舞い飛ぶ空がありました。鷺草が群れ咲く野原がありました」と記しています。
 サギソウはラン科の仲間で少し湿っぽい場所を好み、一昔前はごく普通に見かけたものです。鳥のシラサギ(コサギ・ダイサギなど)は水田や鴨川、桂川などにたくさん見受けられますが、野草のサギソウの方は湿地開発や「愛好家」の乱獲で野生の姿はほとんど見られなくなり絶滅寸前と言われています。
 サギソウ(鷺草=学名 Habenana radiata 又は Pecteiles radiata)はラン科ミズトンボ属サギソウ種で、仲間にはダイサギソウ、ミズトンボ、トンボソウ、コアニチドリやイワチドリなど昆虫や鳥の形から名付けたのものが結構多いです。広げた真っ白な翼はラン科の花の主体をなす唇弁で、中央の棒状がサギの首と胴、左右の裂弁の外縁が細かく深く切れ込んでサギの翼そっくりです。
 ダイサギソウはこの切れ込みがありません。薄緑の部分を距(キョ)といって先端の蕊柱(ズイチュウ)に蜜を貯めてガなどの昆虫を引きつけます。(仲野良典)