天徳院の桔梗 臨済宗東福寺派の天徳院(京都市東山区)の庭園で紫の桔梗(キキョウ)が咲き始めました。
 庭園は桃山時代の代表である枯山水庭園。びっしりとうねって植生された新緑のスギゴケが大海原を現し、岩山が浮かびあがって見えます。大きな扇状に分枝した枝先で葉を円錐形に手入れされた樹齢500年の大きなチャボヒバ(Chamaecyparis obtusa cv. Breviamea:和名=脚が短いチャボににているからチャボヒバ)がよく調和しています。その庭園の至る所に桔梗が4、5本の群れ状に育ち、清純な紫の花を咲かせています。
 横浜から京都観光にやってきた女性二人連れは、「桔梗の花はまだ少しですが京都らしいきれいなお庭ですね」と縁側に座ってしばし新緑の庭にひたっていました。福岡県からの一人旅の女性は「京都は今日一日だけで真っ先にこのお寺の庭園を訪れたんです。咲いてる桔梗はちょっとですがまぁ静かでいいお庭で、こころなごみます」と笑顔。住職の爾英晃さんは「まだ少ししか咲いてませんが、今年は春先から低温が続いて、庭園公開も1週間のばして今日から始めました。あと1週間もすればきれいな桔梗が咲き誇ります」と話します。
 「桔梗の寺」として知られている東福寺塔頭の一寺である天徳院は南北朝時代の創建。衰退と再興の変遷を経て、秀吉・秀頼の庇護を受けて栄えましたが、住職の清韓が選文した有名な方広寺の梵鐘の銘文が家康の逆鱗に触れ、天徳院は取り壊されました。1789年(天明9年)に再建され現在にいたっています。
 7月17日まで一般公開。大人500円、中高生300円。(仲野良典) 
 桔梗の花言葉=清楚な美しさ
 「石のしたしさよしぐれけり」萩原井泉水