科学者会議京都支部緊急講演会 東日本大震災で被害を受けた東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)の事故について、日本科学者会議京都支部会員の深尾正之元静岡大学教授は19日、「発電所全体の危機管理に欠陥があったと言わざるを得ない」と語りました。
 同支部が京都市内で開催した緊急市民講座で話したもの。会場いっぱいの約200人の参加者を前に深尾氏は、原子力発電の危険性について、▽燃料供給を止めれば安全に停止できる火力発電と違い、制御棒を挿入して核分裂連鎖反応を止めた後でも炉内に存在する大量の放射性物質が熱(崩壊熱)を放出するため冷却を続ける必要がある▽外部から常時燃料供給する火力発電と違い、数年間の運転に必要な燃料が炉内にあり、災害時に燃料を取り出すことはできない―と指摘した上で、「崩壊熱は0.1%になるまで停止後1年かかる。制御電源などが抜本的に解決されない限り、外部からの放水に頼らざる不安定状態は1年以上続く」と述べました。
 同氏は今回の事故について、電力をすべて失った中で対応を迫られた現場の技術職員の困難は想像を絶するとした上で、「複数あるはずの非常用ディーゼル電源がすべて機能しなかったのは設置方法に安全哲学が欠けていたのではないか。また、使用済み燃料の貯蔵プールでの冷却系統停止後の事態は十分予測できることで早期の対策があれば対処は容易であったはず」と話しました。