今年1月まで京都市内で開催された「人体の不思議展」(同展実行委員会主催)について、医学・医療の倫理面から考える講演会(主催・京都府保険医協会、京都府歯科保険医協会、京都民医連)が20日、京都市中京区のハートピア京都で開催され、医療関係者など65人が参加しました。
 京都展(2010年12月4日~1月23日)開催の中止を求めて「人体の不思議展を考える京都ネットワーク」の結成を呼びかけた、京都法律事務所弁護士の小笠原伸児さんは、「最も重大な問題点は本物の死体を営利目的で展示したこと」と指摘。刑事告発、民事提訴した同展の法的問題について詳細に解説し、「二度と同展を開催させないために民事訴訟の中で実体的違法を問うていきたい」とのべ、訴訟支援を訴えました。
 福島県立医科大学講師の末永恵子さんは、展示された人体標本について、▽由来が分からず、故人の意思も証明されていない▽ポーズをとらされるなど展示方法が不適切▽本物を使う必然性に疑問がある▽死体展示によるモラルハザードがもたらす道徳的コストが考慮されていない―など倫理的問題を挙げ、市場経済下で進む死体の商品化とその是非などについて解説しました。
 また、過去に医学・医療団体が同展を後援した事実を明らかにし、検証・反省する必要があるとのべ、「死体の尊厳を損なうことは人間の尊厳をおとしめる危険性につながる。同展との決別を選択する時がきている」と強調しました。
 フロアからも多数の発言があり、同展を見た渡邉医院院長の渡邉賢治さんは、「プラストミックは半永久的に遺体を保存する技術としてはすばらしいが、その反面、相手を思いやり、尊厳を守るという大切な感覚を失わせ、遺体を遺体でなくしてしまう可能性のある技術でもあることを忘れてはならない」と警鐘を鳴らしました。(樋下光雄)