日本共産党府議団(新井進団長、11人)は2日、地域経済の振興と再生を目指す「京都府中小企業振興基本条例大綱」を発表しました。

 同条例大綱は、中小企業が京都経済の根幹であるという認識に基づき、総合的な中小企業振興を行い、地域経済の活性化させることを目的としています。19項目にわたって府、事業者、府民・関係者の役割を明らかにし、中小企業の振興、地域づくりの活性化、伝統・文化や観光振興などを定めています。
 同府議団は、条例大綱をもとに業者や経済団体などと意見交換・懇談し、府で「中小企業振興条例」の制定を目指しています。「中小企業振興条例」は、現在15道府県が制定・実施し、全体で70近い地方自治体で行われています。

 同日記者会見した同党の新井府議は、中小企業は長年にわたる下請けいじめなどに苦しめられ、91年からの15年間で府内業者は3万カ所以上が倒産・廃業するなど危機的な状況になっていることを指摘し、「地域経済を支える根幹の中小企業を元気にすることが地域再生への大道」と強調。中小企業が苦しむ中、府は補助金による大企業誘致や一部先端企業向けの政策を中心にし、中小企業応援の立場に立っていないことを批判し、「『基本条例』を制定し、政策転換をはかることがどうしても必要」としています。

 「京都府中小企業振興基本条例大綱」の全文は以下の通り。


「京都府中小企業振興基本条例大綱」

  1. 条例の目的
     この条例は、京都の中小企業が京都経済の根幹であるという認識にもとづき、中小企業振興について基本理念を定め、府、事業者、府民および関係者の役割を明らかにし、総合的な中小企業振興をもって、地域経済の活性化と地域社会の持続的な発展に寄与することを目的とする。
  2. 定義
    この条例において掲げる「中小企業」とは、中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条第1項に規定する中小企業者で、府内に事務所又は事業所を有するものをいう。
  3. 基本理念
     京都の中小企業・業者は、京都経済を牽引する力であり、地域社会の主役である。中小企業が元気に活躍できる社会は、府民の雇用と生活が安定した社会であり、文化的にも豊かで住みやすい社会である。私たちは、府の総力をあげて中小企業を励まし、支え、中小企業を第一に考えた総合的な政策を実行することにより、京都経済の活性化と地域の持続的な発展をはかり、安定的で豊かな府民生活の実現をめざすものである。
  4. 府の責務
     府は、基本理念にのっとり、中小企業の振興に関する施策を総合的に策定し、実施する責務を有する。また、実施に当たり、中小企業者や経済団体、市町村、大学等と連携を図るよう努めなければならない。
  5. 関係者の役割
    • (1)中小企業者および中小企業関連団体の努力
       中小企業者は、基本理念にのっとり、経済的社会的環境の変化に対応して、自主的に経営の向上と改善に努めなければならない。また、中小企業関連団体は、基本理念にのっとり、中小企業の経営の向上と改善に主体的に取り組むとともに、府が行う中小企業振興に関する施策の実施について協力するよう努めるものとする。
    • (2)大企業者の役割
       大企業者は、基本理念にのっとり、地域づくりに取り組むことにより、地域の活性化と中小企業振興に資するよう努めるとともに、中小企業と共存し育成する見地に立ち、府が行う中小企業振興施策の実施について積極的に協力するよう努めるものとする。
    • (3)大学等の役割
       大学等は、その人材の育成並びに研究およびその成果の普及が中小企業振興に資するものであることにかんがみ、自主的に地域づくりに取り組む場合には、基本理念にのっとり、これを行うよう努めるものとする。
    • (4)府民の理解と協力
       府民は、中小企業の振興が府の経済の健全な発展および府民生活の向上に寄与することを理解し、中小企業の振興に協力するよう努めるものとする。
    • (5)市町村への協力
       府は、市町村が行う中小企業の振興に関する施策について、市町村に対し、情報の提供、技術的な助言その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
  6. 基本方針
    • (1)知事は、基本理念にのっとり、中小企業の振興に関する基本方針を定めなければならない。 
    • (2)知事は、基本方針を定め、または変更するにあたっては、中小企業者など関係者の意見を聴くとともに、必要事項を公表し、府民の意見を広く求めるよう努めなければならない。
    • (3)知事は、基本方針を定め、または変更したときは、ただちにこれを公表しなければならない。
    • (4)知事は、経済の急激な変化が起こったときは、困難な条件のもとにある中小企業者の経営を維持するため、緊急施策を定め、実施しなければならない。
  7. 創業等への意欲的な取組の促進
     府は、経済的社会的環境の変化に即応した、創業及び中小企業者の経営の革新その他の経営の向上への意欲的な取組を促進するため、経営に関する情報の提供、技術力の向上に関する支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
  8. 産学官民の連携の促進
     府は、産学官民の連携が中小企業の新たな事業の創出、技術力の強化等に資することにかんがみ、中小企業を中心とした産学官民の連携の促進を図るため、関係者の交流の機会の提供、共同研究の実施への支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
  9. 経営基盤の強化の促進
     府は、経営資源の確保が困難であることが多い中小企業者の事情にかんがみ、その経営基盤の強化を図るため、資金供給の円滑化、相談及び支援を行う体制の充実その他の必要な施策を講ずるものとする。
  10. 人材の確保及び育成の支援
    • (1)府は、中小企業の事業の展開に必要な人材の確保及び育成を図るため、就業支援、職業能力の開発、府職業訓練施設の充実、その他の必要な施策を講ずるものとする。
    • (2)府は、学校教育における勤労観及び職業観の醸成が中小企業の人材の確保及び育成に資することにかんがみ、児童及び生徒に対する職業に関する体験の機会の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。
  11. 地域づくりによる地域の活性化の促進
    • (1)府は、中小企業の経営の向上及び改善に相乗的に効果を発揮するような地域づくりに努めるものとする。
    • (2)府は、地域の活性化を促進するため、地域の資源を活用した新たな事業の創出の支援、商店街の活性化を図るための事業の支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
  12. 地域経済振興会議(仮称)の設置
     府は、適切な範囲の地域を単位に、中小企業団体、商工会、金融機関、労働団体、住民団体、大学や研究機関等からなる地域経済振興会議(仮称)を設置し、市町村と協力して、それぞれの地域に合った地域経済振興策を制定し、それにもとづく施策を講ずるものとする。
  13. 伝統文化、観光等の業種別等の振興会議の設置
    • (1)府は、伝統産業、観光産業をはじめ、業種別等の振興会議を設置して振興策を制定し、それにもとづく施策を講ずるものとする。
    • (2)前項の振興会議は、学識者、中小企業者、中小企業関連団体等により構成するものとする。
  14. 共生社会の実現
     府は、中小企業が、女性、高齢者、障害者など、多様な人々を雇用することで、誰もが共に暮らせる共生社会をつくることを積極的に支援するものとする。また、誰もが失敗しても再挑戦できる社会をつくることを支援するものとする。
  15. 施策実施上の配慮
     府は、施策の立案及び実施に当たっては、当該施策が中小企業の経営に及ぼす影響について配慮するよう努めるものとする。
  16. 受注機会の優先的確保
     府は、工事の発注、物品及び役務の調達等にあたっては、予算の適正な執行に留意しつつ、中小企業者の受注の機会の優先的確保に努めるものとする。
  17. 調査及び研究
     府は、中小企業の振興に関する施策を効果的に推進するため、必要な調査及び研究を行うものとする。
  18. 施策の実施状況の公表
    • (1)知事は、毎年、条例に基づく中小企業振興施策の実施状況を取りまとめ、公表し、中小企業者をはじめとする関係者の意見を聴かなければならない。
    • (2)府は、聴取した意見を考慮して、施策をより効果的なものにするよう努めるものとする。
  19. 財政上の措置
     知事は、中小企業の振興に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。