日本共産党府議団の梅木紀秀議員は12日、2月府議会閉会本会議の議案討論で、中小業者の実態をみず大手企業の派遣切りには弱腰な知事の姿勢や、市町村国保への補助制度をなくした問題などを指摘し、一般会計予算、流域下水道事業特別会計予算、水道事業会計予算の3議案に反対し、他の58議案には賛成する立場を明らかにしました。
 梅木府議の討論(大要)は以下の通り。

 日本共産党の梅木紀秀です。議員団を代表して、ただいま議題となっております議案61件のうち、第1号、第9号及び第13号の議案3件に反対し、他の58件に賛成する立場から討論を行います。

 まず、第1号議案「一般会計予算」についてです。 昨年の総選挙で、有権者は、貧困と格差を拡大し、増税と負担増を押し付けてきた自公政権に退場の審判をくだし、「生活が第一」と訴えた民主党に、後期高齢者医療制度の廃止をはじめ、削減された社会保障の復活と、暮らしを応援する政治の実現を求めました。ところが、政権発足から半年がたち、政治とカネの問題をはじめ、後期高齢者医療制度の廃止を先送りにし、労働者派遣法の抜本改正を骨抜きにするなど、民主党政権への失望が広がっています。このような時、京都府政には、府民の暮らしと営業の深刻な実態を把握し、府民の暮らしと営業を応援する、心のこもった施策が求められています。知事は、来年度予算案を「続・京都温め予算」「追いだき予算」と呼びましたが、そうなっているでしょうか。

固定費補助、住宅リフォーム助成に背を向け、デジタルテレビは一括入札強行で大手が落札 中小業者の実態をみない知事

 まず、中小業者への支援の問題です。 府内の中小業者の営業は、いよいよ深刻さを増しています。ところが知事は、今年度予算で、商工会議所・商工会への補助金を4千万円削減し、中小企業団体中央会への補助金も1千万円削減したのに続いて、来年度もさらに商工会議所・商工会への補助金を4千万円削減しています。実に、この5年間で3億5千万円も削減したのです。これで、中小業者を支援していると言えるでしょうか。確かに預託金は、来年度増額し融資枠は拡大されますが、融資が実行されるかどうかが問題です。業者の強い要望で実現した2年間の返済据え置きも、現場では、金融機関の圧力で実際には実行されていません。融資窓口も金融機関に丸投げしたままです。
 また、「融資だけでは生き残れない」という中小業者の声は切実です。国会で、わが党の志位委員長が、「中小業者が営業を継続し、日本のものづくりの技術を残すために固定費の補助を」と求めたのに対し、鳩山首相は「ものづくりの技術は日本の宝」「支援を検討したい」と答弁しました。にもかかわらず知事は、固定費補助の願いに背を向けたままです。
 また、公共事業が削減され、住宅着工件数が過去最悪となる中、緊急経済対策として「住宅リフォーム助成制度を」と求める業者の声にも耳をかそうとしていません。与謝野町では、6700万円の助成で9億円を超える住宅リフォーム工事が、与謝野町の地元の業者に発注され喜ばれています。住民からはトイレの水洗化工事が対象になったことが歓迎され、水洗化率が向上しています。
 また、3月1日から制度を開始した秋田県では、本庁だけで1日20件から30件、8つの振興局にも、それぞれ1日5件から10件、あわせれば1日100件前後の問い合わせが殺到しているということです。12億6千万円の予算を組んでいますから、およそ150億円の仕事が秋田県の業者に発注されることになります。

 住宅の耐震化率90%を目標に、住宅耐震改修助成制度ができて3年になりますが、3年間の実績はわずか100件です。これで、2015年度までに2万3千戸の目標が達成できるでしょうか。住宅の耐震化をすすめるためにも、住宅リフォーム助成を合わせて実施すべきです。地元産材の活用、エコ住宅、バリアフリー化など政策目的と合わせて、この時期にこそ緊急経済対策として実施すべきです。
 さらに問題なのは、緊急経済対策として実施された府立高校に地デジ対応の大型液晶テレビ191台などを購入する「スクールニューディール事業」の入札です。入札の結果、年商4300億円、従業員6000人を上回る東京の大手OA商社が落札しました。福岡県などでは分離分割して、地元業者に発注しているのですが、京都府は、中小業者の申し入れにもかかわらず入札を強行したのです。「京都の電気屋が怒りまっせ」と新聞にも報道されましたが、「中小業者の実態を知事は知らないのか」と強い怒りの声が広がっています。予算委員会の書面審査では、入札競争によるダンピングで地元業者が疲弊しているという訴えが相次ぎました。地元業者への発注と公契約条例の制定で、労働者や中小業者が適正な収入を得ることができるルールを確立し、地域経済を立て直すことが求められています。

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トステム労働者の雇用問題 大手企業に社会的責任を果たすよう強く求めよ

 次に雇用対策についてです。いよいよ3月25日に、トステム綾部工場が閉鎖されようとしています。知事総括質疑でも紹介しましたが、トステムの労働者から「何日までに退職届を出さないと、退職金を減額するとか、解雇するとか言われ、脅しとも感じられた。自分の意志で辞めたわけではない。強制するのは違法だと思うが、何も言えなかった。」という訴えや「就職あっせん先が京都市内では通えない」「会社が本気で斡旋しているとは思えない」などの声が寄せられています。京都府はこれまで企業に71億円もの雇用確保のための補助金を支出してきましたが、中小企業は不況の中でも歯を食いしばって雇用を確保しているのです。ところが、大手企業は不況になれば、簡単に労働者を解雇し、儲けるためには、いとも簡単に国内の工場を閉鎖し、海外に工場を移転するのです。雇用や地域経済をかえりみない大手企業に対して、社会的責任を果たすよう強く求めていかなければ、京都の経済を守ることはできません。大量の派遣切りを行ったジヤトコが、生産が上向いたのか新規採用を募集していますが、違法な派遣切りで職を失った人たちを優先雇用するようジヤトコに働きかけるべきです。それが京都府の責任です。

府の「私立高校授業料無償化」には ふさがなければならない穴が

 第3に、子どもの教育保障の問題です。昨年の2月議会の議案討論で、私は「私立高校の授業料滞納者は、全国で約2万5000人、京都でも500人にも上っている」という事実を紹介し、経済的理由による中途退学者を出さないために、助成の強化を求めました。その後、貧困の世代間連鎖が社会問題となり、自民党も総選挙では「給付制奨学金」の創設、「高校授業料の無償化」をマニフェストに掲げました。世論の広がりで、高校授業料の無償化が前進しましたが、中途退学者を出さないためにはまだまだ塞がなければならない穴があります。先ほど、意見書討論で山内議員が述べたとおりですが、京都府には改善の努力が求められています。
 また、政府は私学の授業料軽減のために、昨年はじめて授業料助成として一人2千円、交付税を上乗せしました。ところが、知事はこれを今年度は上乗せせず、来年度から2千円アップして5万円にすると提案しました。父母から、「今年度、2千円が追加支給されると思っていたのに」との声が寄せられました。とりわけ3年生の父母は「来年ではもらえへん。京都府のフトコロに入るだけか」と怒っています。2千円×3万人で6千万円です。来年度はさらに授業料助成として一人5千円アップされますが、これも補正する予定がないと部長は答弁しましたが、補正予算を組んで、一人5万5千円に増額すべきです。経常費分と合わせれば、3億円もの交付金を京都府のフトコロにしまいこむことになるではありませんか。国からは、生徒の居住地に関わらず交付されているのですから、府外の私学に通う高校生も授業料助成の対象にして、支給すべきです。合わせて、強く求めておきます。

市町村国保への補助制度をなくし、子どもの医療費拡充に背を向ける府政

 第4には、医療費の負担軽減の問題です。府内市町村で国保料の大幅な値上げが行われようとします。知事総括質疑で指摘した通り、国が負担金を減らしたうえに、京都府もかつて7億円あった補助を削減し、現在はゼロ、補助制度そのものをなくしてしまいました。市町村の値上げに拍車をかけたと言わざるをえません。
 また、子どもの医療費の拡充についても、いまや全国トップクラスとはいえない状況です。新型インフルエンザをはじめ、各種のワクチン接種でも、「お金の心配をせずに子どもたちに受けさせたい」と子育て世代の願いは切実です。だからこそ、伊根、南山城、井手、宮津、綾部、舞鶴などで相次いで、府制度への上乗せが実施され、京都市内の子育て世代から、「なぜ京都市でやってくれないのか」と拡充を求める声が広がっています。知事がおっしゃる通り「京都市民も京都府民」です。京都府が制度を拡充することで、京都市内の子育て世代の願いをかなえることができるのです。

一方で、不要不急のムダな事業 一般会計予算に反対

 第5には、不要不急、無駄な事業の見直しについてです。 同和奨学金償還対策事業、畑川ダム建設、天ケ瀬再開発、大戸川、川上ダム建設や京都地方税機構の負担金などは見直し、府民の暮らしと営業を支援するために使うべきです。 以上、第1号議案は、不況で営業と暮らしがいよいよ困難になっている府民の願いにこたえるものにはなっておらず、反対するものです。

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他会派議員も、市町村合併を推進し、農村を疲弊させた知事の責任を追及

 なお、書面審査では、部局を貫いて中山間地域への支援を求める意見が相次ぎました。また、ある委員は「市町村合併で農村は疲弊した」「農協も、社協も森林組合もなくなり、役場もなくなった。中心市街地に全部集まってしまった。」「知事は『合併して、悪くは絶対しない』と答弁したではないか」と府の責任を追及いたしました。「平成の大合併」のかけ声の下、総務省が強力に合併をすすめ、総務省出身の知事が「合併して悪くはしない」と約束し、総務省から来た副知事が府内を走り回って合併を推進してきたことは、誰もが認める事実です。知事はそれでもなお、「提案したのは首長、決めたのは議会」と責任を回避しています。また「合併しなかったら大変なことになっていた」と知事は言いましたが、まさに、段階補正を縮小し、地方交付税を削減してきた総務省の立場からの発言です。合併せずに、住民が力を合わせて、ふるさとを守り、町民の暮らしを守っている自治体の姿こそ、あるべき自治体の方向であると知事は思いませんか。
 また、知事がすすめる「関西広域連合」は、府県の財政を大阪に集中することで、大阪を活性化させようという関西財界の道州制構想につながるものです。「究極の構造改革」と言われる道州制では京都が疲弊し、農村部がさらに衰退することは明らかです。

国への要望で、民主党いいなりの府の態度は大問題

 さらに、書面審査では、自民党議員から、公共事業の箇所づけ問題に続いて、「京丹後市や宇治市から出されている職業訓練センターを廃止しないように国に働きかけてほしい」という要望をどこに提出したのかとの追及がありました。政策企画部長は「民主党府連に届けた」「後の処理はどうなったか知らない」とまったく無責任な答弁をおこない、商工労働観光部長は「これから3月中旬に、厚生労働省に働きかける」と答弁しました。地方分権と言いながら、民主党いいなりの府の態度は大問題です。厳しく抗議し、是正を求めておきます。
 次に、第9号議案「流域下水道事業特別会計予算」についてです。 治水対策は、多額の費用をかける巨大貯留管方式ではなく、小規模貯留管の敷設や河川改修などによって行うべきであり反対するものです。
 次に、第13号議案「京都府水道事業会計予算」についてです。 過大な水需要予測による過大な設備投資の結果、市町にムダなカラ水を押し付け、府民には高過ぎる水道料金としてはねかえっています。黒字になっている府営水道会計から支援すべきであり、予算案に反対するものです。なお、府営3水道の連結で、水道料金が値上げにならないか関係市町および住民は心配しています。過大な基本水量を見直し、カラ水料金を是正すること、黒字になっている府営水道会計や一般会計からの支援を含め、府民の生活を圧迫している水道料金の引き下げに努めるよう求めておきます。

「構造改革から暮らし・ふるさと再生へ」「いのちの平等」掲げる府政の実現を

 最後に一言申し上げます。山田知事にとって最後の議会となりました。知事は、「構造改革に同感」と洛東病院を廃止し、出先機関の統合をすすめ、市町村合併をすすめてきましたが、府民の暮らしはよくなったでしょうか。地方自治体の仕事は、住民のいのちとくらしを守ることです。この8年間を振り返れば、農村は疲弊し、商店街は衰退し、中小業者の廃業が相次いでいます。国の言いなりどころか、率先して総務省の方針を京都に持ち込んできた山田知事の責任は重大です。
 「構造改革から暮らしの再生へ」「構造改革からふるさとの再生へ」と多くの府民が府政の転換を求めています。「いのちの平等」を掲げる府政の実現めざして全力を挙げる決意を表明して、私の討論を終わります。ありがとうございました。