2010京都府知事選挙

2010年1月25日 12:00

宇都宮健児・成宮まり子対談 反貧困を政治の課題に

 「年越し派遣村」から始まった貧困打開を求める国民の世論とたたかいが政治を大きく動かしています。2010年は参院選の年。「反貧困」を政治の真正面の課題にしようと、「反貧困ネットワーク」代表の宇都宮健児弁護士(63)と、青年・学生らとホームレス支援活動に取り組んでいる日本共産党の成宮まり子さん(40)=参院京都選挙区候補=が対談しました。

うつのみや・けんじ 1946年愛媛県生まれ。69年東京大学法学部中途退学、司法研修所入所。71年弁護士登録。「弁護士、闘う 宇都宮健児の事件帖」(岩波書店)など著書多数。

なるみや・まりこ 1969年滋賀県彦根市生まれ。95年京都市立芸術大大学院美術研究科造形構想を修了。01年参院選、03年・05年総選挙、07年参院選で候補者として奮闘。


目に見える形にしよう

成宮まり子・宇都宮健児

 成宮 はじめまして。09年12月の「反貧困ネットワーク京都」設立集会で宇都宮さんの記念講演を聞きました。今、貧困問題に向き合い、打開しようという機運が広がっていますね。

 宇都宮 はじめまして。私たちが「反貧困ネットワーク」を立ち上げたのは07年10月です。現場で多くの人の相談に乗る中で、日本社会に貧困が広がっていると感じていたのですが、マスメディアや政治の問題として正面から取り上げられることはありませんでした。なんとか貧困を目に見える形にしよう、貧困問題を政治的、社会的に解決する動きを作り出そうと考え、発足しました。
 集まったのは、ホームレスや障害を持つ人、シングルマザー、多重債務者、非正規労働者、外国人労働者、DV被害者などの当事者や支援団体の人たちです。それぞれの問題を抱えていますが、貧困に苦しんでいる点は共通でした。それなら、みんながつながって貧困の実態をアピールしようと。

 成宮 07年の参院選では私も候補者として、「ストップ貧困」を掲げてたたかっていたので、反貧困ネットワークの設立に注目しました。大きな取り組みが始まると感じました。貧困をめぐる世論を動かすきっかけになったのは「年越し派遣村」でしたね。

 宇都宮 ええ、日本社会の貧困に対するとらえ方を一気に変えましたね。リーマンショック後、大企業の派遣切りが相次ぎました。仕事を失うだけでなく、住まいを失い、路上に放り出される人が大勢生み出される状況が目の前に迫る中、反貧困ネットに集まる市民団体と労働組合、弁護士、司法書士が共同しました。大都会の真ん中に派遣村のテントが立ち、貧困の広がりが目に見える形で明らかになりました。これを境に、貧困問題はマスコミにも取り上げられるようになったし、政治の場でも議論され始めました。

 成宮 派遣村を受けて、京都では労働組合や医療機関、市民団体が協力して、炊き出しや衣料品提供、健康相談、生活相談を行う「連帯ひろば」という取り組みが始まりました。
 私自身は、若者の働き方という面から貧困問題にぶつかったと感じています。08年の秋以降、京都でも大きな企業がどんどん非正規労働者の解雇計画を発表する中で、直接企業に出向いて派遣切りの中止や社会的責任を果たすよう求めたり、行政に企業への指導を申し入れてきたんです。同時に、実際に解雇された人の力になりたい!と。そんな時、派遣村にボランティアとして参加した京都の大学生らと一緒に京都駅などに寝泊まりする人たちを支援しようと、毎週土曜夜に炊き出しや生活保護申請の相談を始めたんです。

 宇都宮 私も今一番心配しているのは、一昨年以降失業者が増え、野宿を余儀なくされる人が急増していることです。首都圏で炊き出しに並ぶ人は倍近くに増え、反貧困ネットワーク事務局長の湯浅君(誠)がやっている「自立サポートセンター・もやい」に相談に来る人は3~4倍になっています。

危機感持ち取り組みを

 成宮 京都の状況も同じです。失業し、寮を追い出されて、路上に出たばかりの若者や、路上が初めてでどうやって寝泊まりしたらいいか戸惑っている若い人や、遠くは北海道や九州からたどりついたという人もいます。結局、派遣切りにあって以降、安定した仕事に就けないでいる人が、路上生活になってしまっています。雇用保険に入っていても、受給期限が切れて無収入になる人が京都府内だけでも1万1600人にも上るといいます。そもそも失業給付が受けられない人も多い。

 宇都宮 支援は緊急課題ですよ。昨年、湯浅君を政府の国家戦略室参与に送り出しました。その結果、ワンストップサービス(注1)が11、12月と全国各地で実行されました。一昨年、政府や自治体がまったく対応できなかったことと比べると、湯浅君の頑張りやこれまでの取り組みが政府を動かしました。

 成宮 11月のワンストップサービスには京都の会場にも130人が訪れました。不十分な点もあるでしょうが、前向きの一歩だなって感じます。というのは、私は、鴨川の橋の下で2カ月間寝泊まりしている人と一緒に参加したんですが、本人は覚えてなかったのですが、雇用保険の記録を調べてもらったら加入記録が見つかり、失業保険が受けられることになりました。その人は、一度は自殺を考えるところまでいったそうですが、一筋の希望が見えたんです。失業給付だけでなく手当つき職業訓練の手当や住宅手当などの支援策を受けられる可能性も出てきて、帰るころには顔つきが変わっていました。こうした行政の取り組みは継続してやってもらわないといけないと思います。

 宇都宮 そうですね。政権全体として今の状況にもっと危機感を持って取り組んでほしいですね。

 (注1)国と地方自治体が協力し、失業者を対象に、仕事や住居探し、生活保護申請などさまざまな相談に1カ所で応じる取り組み。
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